昨日は夜更かししたので朝寝坊。九時に起床。今日は土曜日、会社は休み。この一日という時間を自分一人のために潤沢に使えると思うとワクワクする。一風呂浴びてから外出。新宿へ行く。
まず、大ガード脇、金券ショップの並ぶ界隈に寄る。映画館に正規料金で入ると大人一枚1,800円。しかし、金券ショップで前売券を買えば1,270~1,500円で済む。3~5枚につき1枚うく計算だ。頻繁に映画を観るのでこの差は大きい。
今回は合計5枚購入。もちろん、今日観る分だけではない。私は会社帰りにレイトショーを観に行くことが多いし、休日でも用事があったけれどたまたま時間があいて観に行くというケースもある。いずれにせよ、観ようと思い立ったらいつでも行けるよう、予め買っておくことにしている。観に行けないまま上映が終わってしまうこともたまにあるが、それでもこの方が経済的に効率がよい。
歌舞伎町の新宿ジョイシネマで山田洋次監督「武士の一分」。十時四十分開映。朝食がまだだったので近くのファーストフード店でハンバーガーを買い、館内でササッと済ます。
私はいつもなら山田洋次の映画など観ない。理由は、寅さんシリーズ、釣りバカシリーズのマンネリ化した印象が強いこと、「学校」シリーズを観て鳥肌が立ったこと。ところが、昨年末、たまたまラジオで宮台真司と宮崎哲弥の対談(雑談?)を聴いていたら、宮台が「武士の一分」をやたらとほめていた。曰く、最近の日本映画は小器用にまとめてはいるが人間の“痛み”が感じられない、だけどこの映画には“痛み”がある、とのこと。宮台が山田洋次をほめるという取り合わせが気になっていたので観に行った。
“痛み”という表現がしっくりくるかどうかは分からないが、確かにとても良かったと思う。ここで描かれている、理不尽な立場に置かれ、それでも筋を通そうともがく葛藤には心打たれる。木村拓哉も実はあまり好きではなかったが、今回、役柄にうまくはまっており、これにも正直言って驚いた。この作品は意外と収穫だった。
終わったのは十三時頃。十四時から紀伊国屋ホールで本田由紀さんの講演会がある。それまで時間つぶしのため紀伊国屋新宿本店の棚を見て回った。まず二階の文庫・新書フロア。気になる新刊がたくさんある。菊池理夫『日本を甦らせる政治思想──現代コミュニタリアニズム入門』(講談社現代新書)、『宗教vs.国家──フランス〈政教分離〉と市民の誕生』(講談社現代新書)、本間義人『地域再生の条件』(岩波新書)、小峯和明『中世日本の予言書』(岩波新書)を手に取り、「武士の一分」の原作である藤沢周平『隠し剣秋風抄』(文春文庫)を合わせ、計5冊を購入。しめて3,685円。
きりがないし、給料日直後とはいえ私は決して裕福ではないのでこれで打ち止めにした、つもりだったが、次に五階の人文書フロアの新刊コーナーへ行くと、何と文庫でドゥルーズ『意味の論理学』(上下、河出文庫)、ホルクハイマー・アドルノ『啓蒙の弁証法』(岩波文庫)が出ているではないか。実は先月、ドゥルーズ・ガタリ『アンチオイディプス』(上下、河出文庫)をやはり衝動買いしており、また佐藤優の著作に触発されてフランクフルト学派をしっかり読み直そうと殊勝な心がけが芽生えたためハーバーマス『公共性の構造転換』(未来社)を買ったばかりだが、いずれもまだ読んでいない。しかし、躊躇なく購入。文庫とはいえそれなりに値は張り、3冊合計3,360円。今日は新書や文庫だけしか買っていないのに7,000円を超えてしまった。
私は学生の頃から気にかかった本は予算の許す限り買うように心がけている。普段の生活水準からすると、本や映画にかける金額は分不相応だと思う。しかし、投下資本をはるかに上回るだけのリターンは確実にある。節約の工夫は必要だが、ケチるのは絶対に損だと考えている。とは言え、さらに棚を見てまわると必ず本を買ってしまうから、そそくさと講演会場に移動した。
本田由紀さんの講演会は十四時に開演。タイトルは「人間力っていうな!」。『多元化する能力と日本社会──ハイパーメリトクラシー化のなかで』(NTT出版、2005年)が大仏次郎論壇賞奨励賞を受賞した記念の講演会。私は以前から社会格差論に関心を持っており、それとの関わりで本書を読み注目していた。このブログでも以前に紹介したことがある。
教育学の広田照幸さんが本田さんにインタビューする形で進められたが、基本的には本書の内容を踏まえた話題が中心。メリトクラシー(業績主義)では選抜の基準が明確であるため努力の方向性が見えるが、ハイパーメリトクラシーでは人間の意欲、熱意、創造性など個々人の内面にまで立ち入る計測不可能な部分まで評価されるようになり、選抜基準が曖昧という点で厳しい。むしろ、何らかの成功を収めた人を後知恵で「人間力があったからだ」と言っているだけなのではないか。その“人間力”なるものは、幼少時からの家庭環境で左右されるので、階層固定化のおそれがある。女性にはパーフェクト・マザーの圧力が強まる、などの問題が指摘され、対案として“専門性”というキーワードが示される。専門性教育によってキャリア形成のとっかかりを得る、目標を共有する共同体の中で様々な人と共同作業をすることで社会的対人能力を身に付けられる、などの指摘には本書を読んだ時から関心を持っていた。
ただし、今回の講演でもそうだが、具体的な例を出そうと本田さんは努力されてはいるものの、やや現実性に乏しい印象も否めない。これからの深まりに期待したい。
十五時半過ぎに講演会終了。次の予定まで時間があまったので新宿をぶらり。ジュンク堂に行こうかと思ったが、行けば必ず本を買ってしまうので、抑えた。土日の新宿は混んでいるが、比較的すいている喫茶店がいくつか念頭にあるので、そこへ移動。途中、東急ハンズ前の陸橋を渡りサザンテラスを通りかかったが、JR東日本本社の前あたり、何やら長蛇の列。新しくできたドーナツ屋のようだが、相当な評判らしい。
十七時半から新宿ガーデンシネマにて、岩井俊二監督「市川崑物語」。私はこれまで市川崑の撮った映画を特別に意識して観てきたわけではない。あくまでも岩井俊二ファンとして来た。凝りに凝った映像美で特筆される新旧世代二人の絡みには興味があったが、この映画は予想していた以上に良かった。
市川のフィルモグラフィーに彼の生い立ち、妻・和田夏十との馴れ初めなどを織り交ぜ、時折岩井のコメントを字幕で入れるという実にシンプルな構成。しかし、さすがに岩井で、映像のいじり方がとてもうまい。ただし、いま上映中の「犬神家の一族」の撮影風景や映像の一部を入れるのは反則だ。観たくなるじゃないか(笑)
もともと座席数が少ない所だが、観客は私を含めて十人くらい。お昼の回に岩井俊二と市川崑が来ていたようなので、その反動だろうか。新宿ガーデンシネマは去年オープンしたばかり。伊勢丹から明治通りをはさんだ向かい側。以前は新宿文化シネマといっていた建物だろう。今まで新宿でミニシアターといえば、テアトル系の二館と武蔵野館くらいだったが、昭和館がK‘s cinemaとなったことも含め、増えつつあるのは嬉しい。
帰りに、夕食を兼ね、近所の安い居酒屋に寄った。ホッピーを飲み、中身の焼酎を何回もおかわりしながら、このブログ記事の下書き。九時過ぎに帰宅。
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