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2018年2月14日 (水)

【映画】「嘘を愛する女」

【映画】「嘘を愛する女」
 
 商品開発の仕事に夢中なキャリア・ウーマンの川原(長澤まさみ)は、偶然に出会った小出(高橋一生)と同棲している。結婚を考え、小出を母親に紹介しようとしたが、その日に限ってなぜか小出と連絡がつかない。彼はくも膜下出血で倒れて意識不明、病院に搬送されていたのだった。その時になってはじめて彼が名前も身分も偽っていたことが判明する。5年間ずっと愛し続けた相手は一体何者だったのか──? 彼が秘かに書いていた小説を手掛かりに、彼女は瀬戸内へ答えを探りに行く。
 
 東京、小さな村の連なる瀬戸内沿岸、そして「事件」の起こった郊外の一軒家──この映画は基本的にこうした三種類の空間を往来しながら進行している。東京は競争社会。がむしゃらに働かねばならず、親しい同僚も油断はできない。対して、瀬戸内でたまたま立ち寄った居酒屋では川原は素直に本音を語り、リラックスしている様子だ。映画の背景をなす「事件」の起こった一軒家は孤独を表しているのだろう。「事件」後に東京へ来た小出は、不特定多数の中に消えていくことを望んでいた。
 
 小出が目覚めたとして、川原は今後も一緒に暮らしていけるのだろうか。彼女は小出の「嘘」を知った。同時に、小出が小説の中で思い描くフィクションを通して、彼の思いにも気づく。人間関係には仮構を積極的な意志によって築き上げていくという側面がある(だからこそ、映画中で出てくるDNA鑑定で親子関係に安心を求めようとする血縁主義は胡散臭い)。東京という匿名の不特定多数が織りなす空間は「無」にもなれるが、同時にフィクションを意志することで新たな関係性を築き上げる契機ともなり得るだろう。本作のタイトル「嘘を愛する女」はそういうものとして受け止めた。
 
日本/2018年/118分
監督:中江和仁
(2018年2月13日、新宿ピカデリーにて)

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