武井弘一『茶と琉球人』
武井弘一『茶と琉球人』(岩波新書、2018年)
本書ではまず、近世琉球は自立していたのか?という問いを立て、その答えを探るため琉球をめぐるモノの動き、とりわけ茶の流通に注目する。当時の琉球人が人吉の球磨茶を好み、その輸入に躍起になっていたというのは初めて知った。琉球の歴史を考える際、薩摩藩=支配者、琉球国=被支配者という政治的側面に目が奪われがちだが、もちろんそれは間違っていないにせよ、本書では球磨茶の消費者としての近世琉球に着目し、生活経済史のレベルから捉えようとする。当時の琉球は実は貿易赤字で、見方を換えると貿易に依存せずとも琉球人の暮らしは成り立っていた。つまり、近世琉球社会は農業を土台として自立していたというのが本書の結論である。
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