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2018年2月10日 (土)

佐伯啓思『経済成長主義への訣別』

佐伯啓思『経済成長主義への訣別』(新潮選書、2017年)
 
 近代経済学の考え方では、ホモエコノミクスを単位とする方法的個人主義を前提として市場経済の調節機能を想定する。対して、著者はむしろ市場経済の背後にある集団的な価値や慣習にもとづく社会性へ視線をそそぎ、そうした観点から経済学批判をすすめる。その考え方はカール・ポランニーに近いと自ら記している。
 
 本書のタイトルは「経済成長主義への訣別」となっているが、別に経済成長そのものを拒絶するわけではない。著者の認識にはまず、実際問題として今後の経済成長は難しいだろうという見通しがある。それは、第一に、人口減少・高齢化。第二に、グローバル化はコスト削減圧力が強まることで賃金抑制→消費需要の低迷という悪循環に陥る。第三に、フロンティアの消滅。つまり、土地、イノベーション、労働力など「容易に収穫できる果実」がもはや枯渇している。こうした条件から考えると、今後の経済成長は見通せない。何よりも、「経済成長」に市場の価値を置こうとするイデオロギーへの違和感が表明される。
 
 本書では様々な経済思想書を援用しつつ、「経済成長」のみにこだわる硬直した思考様式が、経済の本来の前提たる「ふつうの生」への配慮が見失われていることへの異議申し立てが述べられていく。著者の考え方に賛成するか反対するかはともかく、経済文明論的な視野の中で知的刺激を受けることができる。

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