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2016年2月 9日 (火)

【映画】「バーバリアンズ──セルビアの若きまなざし」

【映画】「バーバリアンズ──セルビアの若きまなざし」
 セルビアの首都ベオグラード郊外の工場地帯で鬱屈した日々を送る若者たち。そうした一人のルカは学校には行かず、毎日不良仲間とつるんでいる。父は行方をくらませて一家は生活保護を受けている。恋人は地元サッカーチームのスター選手にとられ、仲間とつるんでも気が紛れない。2008年2月、ちょうどコソヴォがセルビアからの独立を宣言した頃で、テレビは連日、関連報道で騒ぎ立てている。
 将来への希望が見いだせず、アモルファスな苛立ちを持て余して、刹那的な行動に身を委ねるしかない。そのはけ口は様々──サッカーを応援するフーリガン、ネット上でのガールハント、そしてコソヴォ独立反対のデモ。暴徒化したデモ隊はアメリカ大使館へ突入したばかりでなく、商店街の略奪まで始まる。ルカが「アメリカ大使館へ行こう」と言うのに対し、仲間は「そんなことより、スニーカーを盗ろうぜ!」という反応。憂さ晴らしの略奪と政治的ナショナリズムとしてのデモ参加とが、彼らにとって鬱屈のはけ口として選択可能な等価値なものであることが示されている。
 デモ隊に参加した若者たちの「コソヴォはセルビアの聖地!」というシュプレヒコールと、サッカーの応援歌は似ている。ルカは元カノには冷たくあしらわれ、父親には見捨てられた。ある事件のためフーリガン仲間から殴られたが、敢えてサッカースタジアムに戻り、自分を殴った仲間たちと一緒に声を張り上げて応援歌を歌うしかない。将来に希望がなく、愛情や友情といった直接的な関係も失って疎外感に苛まされている若者にとって、最後にすがりつけるのは集団行動にしかないということか。こうした描き方は、やり場のない苛立ちや疎外感がナショナリズムを形成していく過程を浮き彫りにしているように見える。
【データ】
原題:Varvali(Barbarians)
監督・脚本:イヴァン・イキッチ
2014年/セルビア、モンテネグロ、スロヴァニア/87分
(2016年1月8日、渋谷・シアターイメージフォーラムにて)

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