五野井郁夫『「デモ」とは何か──変貌する直接民主主義』
五野井郁夫『「デモ」とは何か──変貌する直接民主主義』(NHKブックス、2012年)
ウォール街占拠デモや3・11以降における日本の脱原発デモなどアクチュアルな現場の考察を手がかりに、「クラウド化する社会運動」としてのデモの可能性を探る論考。
デモに着目した戦後日本政治史として興味深いが、良くも悪くも若書きという印象も受けた。例えば、中曽根政権の臨調を取り上げて「自民党政治が民主主義を押し殺してきた」という言い方をするのは少々乱暴ではないか。私だって自民党に票を投じたことなんて一度たりともないが、少なくとも手続的正統性の範囲内で実施された政策であった以上、こういう感情論は説得力を減じてしまう。
取り上げられたトピックは新しいにしても、形骸化した議会政治に対して民意を訴える直接政治=デモが必要という問題意識は、古典的というかオーソドックスとも言える。新味は感じなかったが、とは言っても本書をけなずつもりはない。むしろ、政治がいつの時代でも不可避的にぶつかるアポリアを正面から取り上げ、それを「デモ」という現在的テーマの中で位置づけているところに意義があると言えるだろう。
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