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2012年5月11日 (金)

台湾旅行⑥(5月6日、旗山/5月7日、帰国)

(承前)

 美濃は早めに切り上げ、高雄方面へ戻るバスに乗る。15分ほどで旗山に着いた。こちらの方が美濃よりも街の規模は大きい。バスターミナルには高雄・左営ばかりでなく鳳山や台南など各方面へのバスが発着しており、この近辺の交通拠点となっている様子だ。ただし、位置が町外れにあって最初は方向感覚がつかみづらく、ちょっと道に迷いそうになった。写真は中心街へと向かう途中の通り。

 旗山はもともとバナナの産地として知られた街で、収穫されたバナナを運ぶ鉄道がここまで引かれていた。すでに廃線となっているのだが、駅舎が再建されて観光スポットになっている(写真写真)。台湾ではこうしたケースはよく見かける。中はちょっとした観光案内スペースとなっており、バナナなどお土産品も売っていた。

 駅舎の裏手に回ると、写真の建物が見えた。瓦屋根のぼろい日本式だ。何だろう?と思って近づくと、「旗山信用購買販売利用組合工場」跡地となっている(写真写真写真)。日本統治期に建てられた建造物で、今は歴史遺産として改修工事中のようだ。

 旗山駅に戻る。商店街へと向かう手前にぼろい建物があった(真、写真)。よく見ると、古い亭仔脚である。ロープがめぐらされ、崩れかかって危ないから近寄るなという注意書きが貼ってあった。亭仔脚というのは、建物の一階部分の道路に面した一角を歩道として提供し、雨や暑さをしのげるようにした構造のこと。要するに、台湾の主要都市に必ずあるアーケード式歩道である。南方でよく見かける建築様式だが、台湾では日本統治期に義務化された。

 写真もやはり旗山駅近くにあった古い日本式家屋。現在は喫茶店として再利用されているようだ。こういう利用方法も台湾では時折見かける。

 旗山老街を歩く(写真)。日本統治期に作られた洋風建築が見られる(写真写真写真)。バロック風のファサードが良い味わいを出している。何となく、このレトロな町並みは、台北近郊の三峡の老街と雰囲気が似ていると思った。休みの日なので屋台が並び、地元観光客が買い食いしながら歩いている。私もバナナ・アイスや、愛玉子などを買い食い。なお、バナナ・アイスは旗山枝仔冰城というお店で買った。ここは割合に大きな構えで、創業1926年。メニューにもヴァリエーションがあり、イート・インのコーナーは混んでいた。タロイモ・アイスが名物らしいのだが、旗山ならバナナだろうという勝手なイメージでバナナ・アイスにした(写真)。

 アイスを買ったお店のある十字路で旗山老街から離れ、地図を見ながら孔子廟へと向かう。途中に武徳殿という日本統治期の建物があった。現在は改修されてコミュニティ・ホールのように使われている。こうした武徳殿も台湾の各地にあり、他にも台北郊外の大峡で見かけた覚えがある。武徳殿というのは当時の警察関係の武道場である。武徳殿の本堂には大きな覆いがされて、ひさししか見えない(写真写真写真)。横に張り出した別棟の方はそのままの姿を残している(写真写真)。中に上がると写真のような感じ。土足で上がるのは気がひけるな。

 武徳殿はかつての旗山神社のすぐふもとにあった。旧参道だった階段(写真)の途中から見下ろした武徳殿(写真)。旗山神社の跡地には現在、高雄市孔子廟がある。門構えは台北の中正紀念館と全く同じ形式だ(写真)。旗山の街並を一望にできる高台である(写真写真)。なお、旗山は高雄県に属していたが、最近、高雄市に吸収合併されたので「県」ではなく「市」となっている。台湾にあった神社の跡地は戦後、忠烈祠にされたケースが多いのだが、高雄の忠烈祠は高雄市内にすでにあるから、こちらは孔子廟となったのだろうか。境内の目立つところに蒋介石の銅像、孫文や蒋経国の言葉などがある(写真写真)。日本軍国主義の「日本精神」から国民党イデオロギーへと転換したことを台湾の人々に誇示する目的があったと考えられる。現在は人影もまばらで、静かな心地よい空間となっている。

 高雄に戻った。いったん宿舎に戻り、食事に出る。MRT三多商圏駅で下車、遠東百貨店の17階にある誠品書店の高雄店に寄る。高雄市立歴史博物館が土日には夜21時まで開館しているのを思い出し、タクシーを拾った。しかし、今日はなぜか休館中。とりあえず写真だけ。高雄市立歴史博物館は日本統治期に高雄市役所として建てられた帝冠様式の建築で(ちなみに、旧高雄駅舎も帝冠様式→写真)、戦後も引き続き高雄市政府として利用されてきた。二・二八事件のとき、国民党政府側と交渉するため地元有識者の組織した二・二八処理委員会がここに置かれたが、国民党軍によって制圧された際に砲撃を受け、一部は損壊したという。こうした因縁もあって二・二八事件に関する展示・研究も行なわれている。博物館前の道路を挟んだ向かい側にある公園には二・二八事件関連の記念碑もある。

 愛河をぶらぶら歩き、思い立って六合夜市へ足を運んだ。屋台で、以前に台東で見かけてからずっと気になっていた果物、釈迦頭(シュガー・アップル)を入手し、ホテルに持ち帰った(写真)。痛みやすいからか、輸出はされていないらしい。割るとこんな感じ(写真)。見た目はゴツゴツしているけど、結構やわらかい。屋台の人が二つに割ってくれたのだが、コツがありそうだ。柿の種ほどの大きさの黒い種が白くてクリーミーな果肉に覆われており、それを一つ一つスプーンですくいながら食べる。淡白な甘さ。これは何だろう、ヤシ系の味なのかな? うまく表現できない。一人で食べるには大きくて、飽きてきた。半分がちょうどいいくらい。

 5月7日、帰国。左営から8時に出る高速鉄道に飛び乗った。朝食を買う時間もなく、車内販売にもあまり食欲をそそられるものがなく、空腹のまま10時に台北着。そこで、鼎泰豊の敦南店に行ってしっかりブランチ。そのまま誠品書店敦南本店へ行き、色々買い込む。旅行中に買い込んだ中でめぼしいのは以下の通り。
・白先勇『父親與民国:白崇禧将軍身影集』(時報出版):白先勇は台湾現代文学では代表的な作家で、この本は父親であった白崇禧・元国防部長について初めて書いたという触れ込み。評伝というより、写真集にコメントを加えている感じ。
・周婉窃『海洋與殖民地台湾論集』(聯経出版):周婉窃は台湾大学教授、台湾史研究では第一人者で、邦訳された『図説 台湾の歴史』(平凡社)は「東アジアの100冊」の中に選ばれている。今回買った『海洋與殖民地台湾論集』には、私が以前から関心を持っている江文也についての論文「想像的民族風─試論江文也文字作品中的臺灣與中國」も収録されていた(ただし、台湾大学のHPにPDFでアップされているのをすでに読んだけど)。
・郭明正『真相巴萊:賽德克巴萊的歷史真相與隨拍』(遠流出版):魏徳聖監督の映画「セダック・バレ」に合わせて刊行された本。著者はセダック族出身で、この映画の言語指導を行った人。ただ、映画のストーリーだけでは観客を誤解させかねないという問題意識から書き下ろされている。周婉窃が序文を寄せている。
・『建國舵手 黃昭堂』(吳三連台灣史料基金會):昨年亡くなったばかりの台湾独立派の重鎮、黄昭堂のオーラルヒストリーのようだ。
・莊永明『台灣歌謠:我聽我唱我寫』(台北市政府文獻委員會)
・賴香吟『其後 それから』(印刻出版):小説集。話題の新刊らしいのでとりあえず買った。

 帰りの飛行機の中では『接接在日本2』(商周出版)をざっと通読。日本に押しかけ女房でやって来た台湾の女の子・接接が受けたカルチャー・ギャップがテーマ。イラスト・エッセイなので気軽に読める。

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