台湾旅行④(5月5日、東港・大鵬湾)
(承前)
東港に戻る連絡船には午後1時半頃に乗船。帰りの便は空いているなあと思いつつ、早めに乗船して仮眠をとっていたら、時間を追うに従って乗船客は増えてきて(特に合宿帰りと思しき大学生風の団体客)、ほぼ満席状態になった。
東港は漁港の町である。マグロの水揚げが有名で、ここから日本へも輸出されているらしい。連絡船発着所から外へ出ると、通りは人や車がごった返し、警官が交通整理をしている。マグロ市が催されており、その会場へと車が次々と吸い込まれていく。行楽がてら買出しに来た人たちのようだ。私がマグロを買っても仕方ないので、その手前にある市場をブラブラひやかす。もちろん魚介類が中心。マグロをその場で切り身にしてパックにつめ、すぐお刺身として食べられるように売っているお店もあった。
大鵬湾へ行こうと思ったが、歩いて行ける距離なのかどうか分からない。バスがあるはずと思ってバス停も探したが、どうも見当たらない。とりあえず東港の町を適当に歩いていたら、昔の日本式家屋を見つけた(写真、写真)。こういうのは見つけ次第、写真に撮っておく。
結局、タクシーを拾った。大鵬湾まで車だとすぐだった。到着したのは3時過ぎくらい。公園としてまだ本格的な整備は終わっていない様子で、人影はまばら。大鵬湾はラグーン状になった内湾で(写真、写真)、日本統治期には日本軍の水上飛行場があったそうだ。戦争中、台湾は「南進」の基地と位置づけられていたから、ここもそうした最前線となっていたのだろう。戦後も国民党に接収されて軍事施設となっていたが、一般開放されて「大鵬湾国家風景区」として整備され始めたのは最近のことらしい。詳しいことはこちらのホームページを参照のこと。
写真のような看板があって、日本軍関係の遺跡も観光資源にするつもりのようだが、まだ公園が完成しておらず、奥の方に入ろうとしたら警備員さんに追い返されてしまった。奥の方を見てみると、写真のような展望台が作られている。明らかに水上飛行場だった過去をアピールしている。
写真は戦争中の防空壕。台湾各地にあり、私は他にも宜蘭、花蓮、台東で見かけたことがある。弾薬庫も現存している(写真、写真、写真、写真)。かつては湾の際まで鉄道が来ていた(写真)。それから、写真は大鵬湾公園の入れなかった区域に見える古い建物。昔の給水塔かな? 気になるのだが、入れてくれないのだから仕方ない。
帰ることにした。頑張って移動した割には不消化感を残したままの一日だった。まあ、こんな日もあるか。
バス停に行く。ここを通過する墾丁快速というバスの時刻表を見ると、終点の高雄市内及び墾丁の発車時間は記されているのだが、ここを何時何分に通過予定なのかは記載なし。正確な時間は分からないから参考にせよということか。ぼんやり待っていたら左営行きのバスが来たので乗車。左営まで146元。
宿舎に戻る途中でコンビ二に寄ったとき、蘋果日報を初めて買った。こんなに分厚いとは知らなかった。余英時が一面にデカデカと出ているのが目に入り、余英時とリンゴの取り合わせなんて珍しいと思って買った(写真)。台湾紙「中国時報」の社長は中国共産党に迎合しているから拒絶する、という署名運動に賛同したことが記事になっている。余英時は中国近代思想史研究では著名な学者で、台湾の中央研究院院士、プリンストン大学名誉教授。マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を意識して書かれた『中国近世の宗教倫理と商人精神』は日本語訳されている。もう82歳なのか。普段は研究に専念して、テレビもネットも見ない生活らしい。
(続)
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コメント
はじめまして。
台湾・東港について調べていて、こちらにたどり着きました。
戦時中、台湾にいた亡き祖父。
海軍で飛行艇に乗っていたという情報から東港にいたのではと。
現在はサーキット場として整備されたと聞き
古い建物はもしかすると無くなってしまったのかと思っていました。
観光資源として残す方向であればまだ望みはあるかもしれません。
12月に共和新村と合わせて訪れる予定です。
最後になりましたが、この旅行記を書いてくださりありがとうございました。
とても参考になりました。
投稿: さくらえび | 2012年9月 1日 (土) 00時57分
はじまして。
わざわざコメントをいただきまして、ありがとうございました。
公園施設そのものが新しく、形成途上という感じでした。サーキット場の内側がキャンプ施設になっており、そこに古い建物もしっかり残されているようです。時期によって開放されるそうですが、私が行った時は残念ながら開放時期ではなく、追い返されてしまいました(苦笑)
私自身は時間がなくて、あまりじっくりと見て回れなかったのが心残りでした。
バスで行けますが、便が多いわけではないので、タクシーをチャーターするなどした方が安心かもしれません。
有意義なご旅行となりますことをお祈りいたします。
投稿: トゥルバドゥール | 2012年9月 1日 (土) 10時27分