まだ読んでない本だけど
アマゾンのおすすめメールが来て、こういう本が近々刊行予定であることを知った。Taner Akcam, The Young Turks' Crime Against Humanity: The Armenian Genocide and Ethnic Cleansing in the Ottoman Empire (Human Rights and Crimes Against Humanity) Princeton Univercity Press, 2012(「青年トルコ党」の人道に対する罪:オスマン帝国におけるアルメニア人ジェノサイドと民族浄化)→こちら。
1905年のいわゆる「青年トルコ」革命でオスマン帝国の政権の座に着いた青年将校たち、いわゆる「青年トルコ党」は当初政治改革を推進しようとしていた。ところが、「国民国家」化を目指して彼らの推進した同質化政策は少数民族への抑圧を引き起こし、とりわけ第一次世界大戦中の1915年に生じたアルメニア人に対する大虐殺は、20世紀におけるジェノサイドの歴史の忌まわしい幕開けとなったことで知られている。
ところが、トルコはオスマン帝国解体後の共和国成立以降も現在に至るまで強硬な民族主義政策からアルメニア人ジェノサイドを一切認めようとしてこなかった。トルコ国内でアルメニア人ジェノサイドに言及すると刑法に問われてしまう。例えば、ノーベル賞作家のオルハン・パムクもこの問題で危うく起訴されそうになった。トルコ国内では情報が制限されているため、一般国民のこの問題に対する認識には国際社会とのギャップが大きい。
著者のTaner Akcamはトルコ人歴史家として初めて公式にアルメニア人ジェノサイドを認めた歴史学者らしい。読んでないので何とも言えないが、そうした意味で画期的な本なのかもしれない。英語で刊行しているのは、他ならぬトルコ国内では無理だからだろう。現在のエルドアン政権は、かつての政権とは異なって民族問題にも柔軟な姿勢を示しているから、少しずつでも変化が見られればいいと思う。
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