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2012年3月 4日 (日)

南条文雄『懐旧録──サンスクリット事始め』

南条文雄『懐旧録──サンスクリット事始め』(平凡社・東洋文庫、1979年)

・伝統的な仏教学が漢訳仏典をもとに、宗派ごとの正当性を中心に議論されていたのに対して、明治以降の近代的な仏教学は海外で新たに学びなおしたサンスクリット、パーリ語、チベット語などで原典から読み直し、宗門的な制約から離れた自由な批判的態度で歴史的・文献学的・理論的研究を進めていった。南条文雄(ぶんゆう、1849~1927年、後に大谷大学の学長)は後者の意味での先駆的な仏教学者であった。近代的仏教学草創期のエピソードがつづられた回想録で、原著の刊行は昭和2年である。
・明治10年代に選ばれて洋行、イギリスでの留学生活が本書の読みどころになるのだろう。まだ数少なかった頃の留学生仲間たちの錚々たる顔ぶれには驚くが、やはりオックスフォード大学で師事した著名な東洋学者マックス・ミュラーのもとでサンスクリットを学んだときの学問的交流が興味深いし、とりわけ同行したものの志半ばで夭逝した笠原研寿へのミュラーの情意をつくした追悼文が目を引いた。
・幕末維新の頃、僧兵として招集されたこと(ミュラーに提出した履歴書に記載したら、大笑いされたらしい)、もともと僧侶には苗字はなかったが、明治新政府の指示で急遽苗字を届出しなければならなくなったときの混乱などのエピソードも目を引いた。

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