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2012年3月21日 (水)

宮田律『イスラムの世界戦略──コーランと剣 一四〇〇年の拡大の歴史』

宮田律『イスラムの世界戦略──コーランと剣 一四〇〇年の拡大の歴史』(毎日新聞社、2012年)

 現在の国際情勢におけるイスラム世界の位置づけを考えていく上で最低限必要な知識を概説した入門書。高校世界史のイスラム史に関わる部分をもう一歩踏み込んだくらいのレベルの知識は満遍なく得られる。新聞の国際面を読む際の副読本として活用すると良いだろう。例えば、イスラム圏の人々の行動パターンを理解する上で不可欠な教義について政治経済と絡ませながら解説しているところは国際ニュースを読み解く上で役立つ。ただ、イスラム経済が資本主義・社会主義とも異なる第三の経済路線を目指しているというのは興味深いのだが、それが近代的経済システムとどのような形で接合するのか、あるいは接合できないのか、この辺りをもっとはっきり整理してくれたらありがたかった。

 イスラムも決して一枚岩ではなく、例えばスンニ派とシーア派との対立などはすでに一般常識になっていると思う。しかし、報道等では教義が違うからと簡単に整理されていることも多いが、ではどのような相違があるのか、よく分からないこともしばしばある。そうした点では、例えば本書でシリアのアラウィ派をめぐる歴史を通して現アサド体制の来歴を解説している箇所は勉強になった。

 日本とイスラムとの関わりでは、井筒俊彦、山内昌之、鈴木規夫など大川周明のイスラム研究における先駆性を高く評価する見解が見られるが、本書でも同様に高評価。どうでもいいが、タイトルの「イスラムの世界戦略」というのは内容と若干合ってない気がした。歴史的に拡大してきた経緯は記されているにしても、そこに目的を目指して段取りを組むという意味での「戦略」はないだろう。

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