« 【映画】「私を離さないで」 | トップページ | 【映画】「生きてるものはいないのか」 »

2012年3月11日 (日)

【映画】「四川のうた」

「四川のうた」

 四川省・成都近郊にある国営の軍需工場を舞台とした賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督によるセミ・ドキュメンタリー映画「四川のうた」をDVDで観た。

 かつて中国では朝鮮戦争以降、西側との対決姿勢が強まる中、核戦争等によって沿岸部が壊滅する事態に備え、内陸部に軍需施設を移転させる政策(三線建設。沿岸部を第一線、内陸部を第三線と呼称)が進められた。この方針に基づいて沿岸部や東北地方から移住してきた人々は、工場を中心に周辺とは切り離された独自のコミュニティーに暮らしていたらしい。しかし、改革開放以降の社会的・経済的変化の波はここにも及び、工場は香港資本に買収されて大型商業施設として再開発されることになった。この映画は解体が進む工場を背景に、ここで暮らしてきた人々の語りを通して中国現代史の一端を描き出そうとしている。

 新旧様々な世代にわたる多くの人々への取材が基になっているが、映画に登場する語り手はプロの俳優が演じている。すべてのエピソードを網羅することはできないから少数のキャラクターに必要な要素を凝縮させているのだろうが、ジョアン・チェンなど有名人を起用することによる商業的な思惑もあるのだろうか。党の政策で移住してきた苦労話を語る老婆から、屈託なく自己実現の夢を語る現代っ子まで、それぞれの語りが並べられていくと、時代的なメンタリティーの相違が浮かび上がってきて興味深い。

 賈樟柯監督はインタビューで中国社会における自我の目覚めについて語っている。しかし、それは1910~20年代における五四運動/新文化運動期のメイン・テーマではなかったか。中華人民共和国成立以降の半世紀で捉えるよりも、一世紀にわたるタイムスパンを経てこのテーマが再浮上していることに私個人的としては関心がひかれている。

 1970年生まれの男性が憧れの少女の髪型を形容するのに山口百恵カットと言っているのが目を引いた。山口百恵主演の「赤い疑惑」という日本のテレビドラマを私自身は知らないのだが、これがかつて中国で放映されて大ブームになっていたことは、劉文兵『中国10億人の日本映画熱愛史』(集英社新書)で初めて知った。

【データ】
原題:二十四城記
監督:賈樟柯(ジャ・ジャンクー)
2008年/中国・日本/112分
(DVDにて)

|

« 【映画】「私を離さないで」 | トップページ | 【映画】「生きてるものはいないのか」 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197828/54195386

この記事へのトラックバック一覧です: 【映画】「四川のうた」:

« 【映画】「私を離さないで」 | トップページ | 【映画】「生きてるものはいないのか」 »