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2012年3月 4日 (日)

【映画】「玲玲の電影日記」

「玲玲の電影日記」

 地方から出てきて水配達の仕事をしている青年。自転車で配達途中のある日、道に積まれたレンガにつまづき、しかも居合わせた女性にレンガで殴られてしまった。訳もわからないまま彼女の部屋の金魚に餌をやらねばならない羽目に…。部屋に入ると映画の機材がたくさんあり、人生の慰めを映画から得ていた彼は大喜び。ふと見つけた日記帳──映画にまつわる彼女の過去を読み始めると、そこには彼自身にとっても驚きの事実が記されていた。

 文化大革命の時期、映画の野外上映会を観ながら育った少女が家族の複雑な機微に悩む姿が描かれている。中国版「ニュー・シネマ・パラダイス」という触れ込みだが、ところどころ映写される作品を通して中国の人たちがどんな映画を観てきたのか、その一端が垣間見えるのが興味深い。少女の母親が自らをなぞらえるスター・周璇は知っているし、「馬路天使」は観たことはないにせよ映画史関連の文献でタイトルに記憶はあるが、これ以外はさすがに分からないな。文革の時期、外国映画は珍しくて人気があったが、それがアルバニア映画だったというのも時代をうかがわせる。

 回想シーンの舞台は寧夏らしい。街を取り囲む黄土高原の無骨な空間が夕陽に照らし出され、そのシーンが醸し出す黄金色は、ノスタルジックな感傷をいっそう強めてくる。このように過去を振り返る心境を捉えた映像は、繊細な美しさがじんわりと胸にしみこんで来て、実に良い。

 文革の時期を舞台とした映画にはノスタルジーをテーマにした作品が多いような気もする。例えば、「1978年、冬。」(原題は「西干道」)も印象的だった。文革も終わりに近づいた頃ではあるが、青春のほろ苦さが描かれており、そのノスタルジックな感傷が中国北部の工業都市の寒々とした風景と重ね合わさると、これがまた切ないからこそ美しい。

【データ】
原題:梦影童年
監督:小江
中国/100分/2004年
(DVDにて)

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