【映画】「ペルシャ猫を誰も知らない」
「ペルシャ猫を誰も知らない」
イスラム体制下のイランでは西欧文化に対する規制が敷かれている。インディー・ロックのバンドを組む若者たち、コンサートを開こうにも検閲で許可が下りず、出国できる見込みも立たない。それでも自由に音楽をやりたいと情熱を燃やす彼らの奮闘。この映画そのものがイラン政府の許可を取らずゲリラ的に撮影されている。
そういえば、テヘラン出身の女性インテリが精神的自由を求めて読書会を開くなどしたことをつづった回想録、アーザル・ナフィーシー(市川惠理訳)『テヘランでロリータを読む』(白水社、2006年)という本もあった。この映画の若者たちも人目を気にして、特に警察に密告されないように、隠れて練習している。警察に捕まっても何とか抜け出すコミカルなやり取りもあった。イスラム革命以前のテヘランには西欧文化がかなり流入していたし、現在でも非合法ではあろうが、様々なルートで西欧の映画や音楽ソフトを入手することもできるようだ。イランでも西欧文化が好きな人は意外と多い。
表現の自由が抑圧されていることへのプロテストがテーマとなるが、必ずしも深刻さ一点張りというわけではない。テヘランの町並みや人々の表情が映し出されるのだが、音楽に乗せて時に軽やかに、時に悲哀をにじませて繰り出される映像がミュージッククリップのようで、これがなかなか面白い。イランという国も、政治体制がこんなにこんがらかっていなかったらもっと魅力的な国なのに…と残念な気もする。
【データ】
監督:バフマン・ゴバディ
2009年/イラン/106分
(DVDにて)
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