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2012年2月10日 (金)

ズビグニュー・ブレジンスキー『ストラテジック・ヴィジョン:アメリカとグローバル・パワーの危機』

Zbigniew Brzezinski, Strategic Vision: America and the Crisis of Global Power, Basic Books, 2012

 新興国が勃興する一方、アメリカも含めた西洋世界が凋落しつつある徴候が見える現在、その先に見えるのは新たな超大国としての中国の台頭ではなくカオスである。パワーが分散化した今後の世界において紛争を防止できるのはやはりアメリカ以外にはない、という前提から、2025年以降まで中長期的な視野に立って戦略的な構想を示そうというのが本書の目的となる。

 第一に、アメリカ主導で「西洋」を立て直し、「新しい西洋」の中にはロシアとトルコも取り込んで安定化を図る。ところで、「新しい西洋」はある程度まで共通した価値観でまとまっている一方、「東洋」は中国、インド、日本など様々な大国がひしめいており安定は難しい。そこで第二に、常に紛争の可能性を秘めている「東洋」に対してアメリカは調停者として間接的な関与をしていく(一方に肩入れして軍事介入など直接的関与をすると連鎖的に紛争が拡大してしまうので慎む)。日米同盟と米中の友好関係を維持しながらアメリカの仲介で日中の和解を進め、日米中のトライアングル関係を構築すれば東アジアは安定する。つまり、アメリカは「西洋」に対しては統合のプロモーター、「東洋」に対しては諸大国間のバランサーの役割を果たすことでユーラシア大陸の地政学的安定に寄与できる、というのが全体的な趣旨。

 パワー・バランスの調整で今後のアメリカの外交戦略を描きなおそうという意図があるにしても、個々の紛争可能性をパズルのピースに見立て、好き勝手に空想をふくらませながら遊んでいるだけという印象も残るな。

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