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2012年1月 8日 (日)

酒井亨『台湾人には、ご用心!』

 酒井亨『台湾人には、ご用心!』(三五館、2011年)読了。カバーの「萌え」系イラストは人によっては引いてしまうかもしれないが、著者は以前にも、日本のアニメやポップカルチャー好きな台湾の若者をテーマとした『哈日族』(光文社新書、2004年)を書いているし、また前著『「親日」台湾の幻想』(扶桑社新書、2010年→こちら)では「親日」ならぬ「萌日」というキーワードを出してきたから、この辺に反応する読者層を狙ったものか。

 ちなみに、この『「親日」台湾の幻想』という本、台湾が日本好きなのは確かだが(著者は「萌日」と言う)、他方で「台湾は親日なのだから、日本の植民地支配は正しかった」みたいな保守派にありがちな議論に釘をさす内容であった。それを敢えて扶桑社=サンケイ・グループから出すという心にくい“配慮”には思わずニヤリとしたものだ。

 「台湾人は○○だ」という決め付け口調はこうした文化論ではありがちな書き方ではあるが、台湾にどっぷり浸ってきた著者ならではの実感なのだろう。『「親日」台湾の幻想』と重なる箇所が多いようだが、ポイントをいくつか挙げていくと、
・良くも悪くも「いい加減」で気分屋さんの台湾人気質、その具体例を色々と紹介していくのが全体的な趣旨。論理的にことを進める中国人気質とは異なり、台湾人はむしろ南方系のマレー人やフィリピン人に近い。「国民国家」にも興味ないから、統一/独立といった政治論には曖昧な態度を取るのが多数派。なお、台湾人はマレー系という指摘については遺伝学者・林媽利の議論を援用している。林媽利《我們流著不同的血液:以血型、基因的科學證據揭開台灣各族群身世之謎》(前衛出版、2010年)は私も以前に台湾を訪れたときに購入して読んだ(→こちら)。
・多言語社会である台湾では、多くの人にとって北京語はあくまでも習った言語であって必ずしも母語ではない。従って北京語のネイティヴチェックをしてもらうときには要注意。蒋介石時代の政治体制の問題もあって“サバイバル”のため言語の使い分け→本音は北京語ではなく、母語の台湾語を使うときに出てくる
・日本のサブカルチャーが台湾ではせっせと翻訳されている→これが台湾を経由して中国語圏に広がっている。
・台湾人が好きなのは現在の日本であって、戦前の日本ではない、という指摘は『「親日」台湾の幻想』を参照のこと。

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