« 2011年6月12日 - 2011年6月18日 | トップページ | 2011年6月26日 - 2011年7月2日 »

2011年6月19日 - 2011年6月25日

2011年6月25日 (土)

【映画】「ファの豆腐」「NINIFUMI」「冬の日」

 何気なく観に行ったテアトル新宿のレイトショー。【movie PAO】という企画で若手監督3人による中篇映画3本立て。

 「ファの豆腐」(久万真路監督)。舞台は下町の商店街。仕事をやめて実家の豆腐屋を継ぐつもりで仕事を手伝っている女性(菊池亜希子)。冬の寒さで早起きはつらそうだが、慣れない彼女を見守る父(塩見三省)の眼差しは温かい。変わらぬ街並、同じような生活リズム。彼女が自転車を引いて豆腐を売りに行き、チャルメラを吹いてもなかなか様にならない。幼馴染みにふられ、気持ちがくじけそうになってもやがて立ち直る彼女の表情の変化、一見平淡のように見える毎日の繰り返しを映し出している中だからこそ、表情の変化がしっかりと捉えられている。菊池亜希子のさり気ないたたずまいが良い。全体的に落ち着きのあるテンポで感情的な機微を描き出しているところが印象深い。今回の3作品の中では一番好きだな。

 「NINIFUMI」(真利子哲也監督)。殺風景な国道沿いの風景が主人公(宮崎将)のすさんだように逃げ場のない心象風景を描き出している、セリフがないだけに風景そのものでよくこれだけ印象的な雰囲気を出しているなあ、と思っていたら、途中からガキのアイドルの撮影風景が紛れ込んだり、後付けのように事件性を強調したり、後半は何だか興醒め。

 「冬の日」(黒崎博監督)。事情があってカメラマンをやめ、東京から故郷へ戻ってきていた女性(長澤まさみ)が旧知のおばさん(風吹ジュン)と再会、話をしているうちに彼女がガンにおかされていることを知り、彼女を撮りたいという気持ちを奮い立たされる、という話。うーん、ストーリー的に当たり前すぎるというか、そもそも長澤まさみが「撮らせてください!」というシーンでの表情が、真剣そうではあるんだけど平板というか、かえって浮き上がってしまって、肝となるシーンの説得力が半減という印象。

(2011年6月24日レイトショー、テアトル新宿にて)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月24日 (金)

J.リンス&A.ステパン『民主化の理論──民主主義への移行と定着の課題』

J.リンス&A.ステパン(荒井祐介・五十嵐誠一・上田太郎訳)『民主化の理論──民主主義への移行と定着の課題』(一藝社、2005年)

・非民主主義体制から民主主義体制への移行の完了、定着するまでの政治的プロセスについて諸類型を提示しながら分析した研究。
・民主主義を成り立たせる5つの主要領域:①自由で活力のある市民社会、②相対的に自立した政治社会、③市民社会や政治社会における自由を保障する法の支配、④民主政府に有用な官僚層としての国家機構の整備、⑤制度化された経済社会(国家と市場との媒介)→これらの領域が相互に関連しながら機能しているのが民主主義体制。これらのうち欠如している領域の創出が民主主義への移行、定着に必要だという考え方。
・国家性の問題。ある組織単位の構成員になることを望まない人々の割合が高いと、その中での民主主義の定着は難しくなる。多民族国家において政治的アイデンティティが混在、多民族・多言語・多宗教・多文化→合意形成が複雑→民主主義的規範や制度を幅広く作りあげる必要。
・フアン・リンスはかつて民主主義と全体主義という両極の間のグレーゾーンに固有の内在論理を持つ政治体制を見いだし、それを「権威主義体制」と呼んだ(高橋進『国際政治史の理論』[岩波現代文庫]に議論の要約が示されていた記憶がある)。本書ではさらにポスト全体主義、スルタン主義を追加→民主主義、全体主義、ポスト全体主義、権威主義、スルタン主義という5類型について多元主義、イデオロギー、動員、リーダーシップという4つの側面から特徴づけ。
・非民主主義(全体主義、ポスト全体主義、権威主義、スルタン主義)の4類型から民主主義定着に必要な領域の構築しやすさを分析、移行経路のパターンを検討する。
・移行にあたっての条件→旧体制のリーダーシップ、移行の担い手、国際的影響、正統性と強制の政治経済、憲法制定環境について検討。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月23日 (木)

岩崎育夫『アジア政治とは何か──開発・民主化・民主主義再考』

岩崎育夫『アジア政治とは何か──開発・民主化・民主主義再考』(中公叢書、2009年)

・欧米社会をモデルとした政治学理論とアジア各国それぞれに固有の社会的・歴史的事情、両方の視点を軸に東~南アジア諸国における開発体制→民主化(民主主義体制への移行)→民主主義(制度として定着)というプロセスを分析、多様な政治社会の中でも大きな枠組みとなる視点を打ち出すことで議論のたたき台を提示するのが本書の趣旨。
・普遍的公式制度/伝統的・非公式的制度→双方の相互作用によって表れる広い意味での「制度」として捉える二重構造モデル。
・開発体制:経済的開発を正統性として掲げることで、政治分野の権威主義体制と経済分野の国家主導型とが結合された体制。
・開発体制→民主化→民主主義というモデルは、アジアの伝統社会が歴史的な構造変容の中で生起した一連の政治動態であると捉え、それらの諸相を把握するための概念枠組みを段階ごとに整理しながら提示。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ファリード・ザカリア『アメリカ後の世界』

ファリード・ザカリア(楡井浩一訳)『アメリカ後の世界』(徳間書店、2008年)

・著者は『フォーリン・アフェアーズ』『ニューズウィーク国際版』編集長などを務めたインド出身の著名な国際問題コラムニスト。
・文明史的レベルで現在の国際情勢を俯瞰しながら、アメリカは凋落しているのではなく、アメリカ以外のすべての国が台頭しつつある状況に直面しているという指摘がメインテーマ。
・テロや内戦リスクにおびえる一方で、政治的動揺と経済的繁栄とが共存する現代世界。
・19世紀の大英帝国の覇権は稀有な環境の産物→ドイツやアメリカの台頭に直面して、イギリスはアメリカと争うのではなく、アメリカの台頭に自らを順応させる外交的決断。こうした姿は現在のアメリカが中国の台頭を目の当たりにしているのを髣髴とさせる。
・他方で、当時のイギリスとは異なり、現在のアメリカには軍事的優位性があり、それは財政破綻を招かずに維持されている。しっかりした経済的・技術的基盤、高等教育による人材の吸引・輩出。従って、アメリカ以外の諸国の台頭は世界のGNPにおける占有率を低下させはするが、アメリカの活発な力は維持できる。
・今後は単独主義的なヒエラルキーを求めるのではなく、仲裁者としての役割にシフトすべき。新興諸国を現行の国際システムの枠内にとどまらせて安定化を図るため、アメリカ自身が率先してルールを守る必要。正当性の力→政治課題を設定、自らの政策に向けて他国やNGOの支持を動員できる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月20日 (月)

アナリー・サクセニアン『最新・経済地理学──グローバル経済と地域の優位性』

アナリー・サクセニアン(酒井泰介訳、星野岳穂・本山康之監訳)『最新・経済地理学──グローバル経済と地域の優位性』(日経BP社、2008年)

・邦訳のタイトルは誤解を招きそうだが、原題はThe New Argonauts、つまりギリシア神話でイアソンと共に黄金の羊毛を求めて大海に漕ぎ出したアルゴ船隊員たちの姿に、ハイリスク・ハイリターンをとる現代のハイテク企業家たちを重ね合わせている。
・アメリカのシリコンバレーは開放的で流動性の高い労働市場→個人のナレッジやノウハウが拡大・浸透しやすい。母国を離れてアメリカのシリコンバレーにやって来て、ここのノウハウを吸収、その上で母国に戻ってノウハウを移植、発展させていく企業家たちの行動形態をイスラエル、台湾、中国、インドを具体例として検証。
・シリコンバレーからの頭脳流出と捉えるのではなく、地域横断的なノウハウや技能の循環によって補完的でダイナミックなネットワークが形成されており、それぞれが発展の恩恵を受けていると指摘、頭脳還流と表現。
・地元と遠隔地のノウハウや専門知識を組み替え続けることが今日のグローバル経済で強い地域となるための条件。産業の専門的分化やサプライチェーンの分散化→適応力が必要。
・シリコンバレーのイスラエル人や台湾人は母国へ戻るインセンティブがあるのに対して、イラン人やベトナム人移民起業家たちは戻らない。また、日本やフランスは大企業・銀行中心の企業構造となっており、アウトサイダー的起業家たちの芽を摘んでしまいやすい。シリコンバレーへと向けて出て行くだけでなく、戻っていくインセンティブがあって技術者や企業家たちの国際的循環が生まれる。国際的に双方向的なコミュニティの形成、国際的企業家たちの横断的ネットワーク。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年6月12日 - 2011年6月18日 | トップページ | 2011年6月26日 - 2011年7月2日 »