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2011年11月19日 (土)

【映画】「スプリング・フィーバー」

「スプリング・フィーバー」

 舞台は南京。同性愛の青年2人。片方は結婚しているが、ゲイの「恋人」との密会が妻にばれて夫婦喧嘩となり、妻はその「恋人」の職場へ殴り込みをかけ、「恋人」である彼は仕事を辞めてしまう。ノーマルでないこと=不潔とみなされてしまう、世間から向けられるコンベンショナルな眼差し。さらに、工場が倒産して投げ出された若い女工も一緒に、3人で当て所のない旅に出る。

 郁達夫の散文作品「春風沈酔の夜」が映画中のところどころで読み上げられる。映画のストーリーと重ねあわされているが、郁達夫が上海の安アパートに逼塞していた貧しい青年文士だった頃の鬱屈を描き出したこの作品とはもちろん内容的にイコールではない。ただ、世間から相容れず、どうにもならない自分へのやるせない焦りのような感覚を通底させようとしているのは間違いないだろう。

 冒頭からずっと薄暗い曇り空が続く。映像は決して明るくないのだが、登場人物それぞれが抱えるパセティックな心象風景と見事に呼応していて、それが感傷的に美しく感じられる瞬間すらある(ロウ・イエ監督の「天安門、恋人たち」も以前に観たことがあるが、こちらも映し出された光景がずっと薄暗かった印象がある)。同性愛とか、中国社会のあり方とか、そういった個別的な話題とはまた別に、時代や立場が違っても感じることのあり得るパセティックな心象風景を描き出しているところがこの映画の人の気持ちをつかむ魅力だろう。

【データ】
監督:婁燁(ロウ・イエ)
2009年/中国・フランス/115分
(DVDにて)

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