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2011年10月30日 (日)

【映画】「東京オアシス」

「東京オアシス」

 深夜の首都高速。最終上映が終わった後の映画館。平日の動物園。本来なら人出でにぎわっているはずの空間なのに人の姿がまばらだと、たまたま居合わせた別人の姿は際立つ。そうしたシチュエーションで出会った四人を三つのエピソードのオムニバス形式で描いている。

 映画館でのあるエピソード。もたいまさこ演じるおばあさんが、連れに置いていかれてしまった、と言う。実際には、たまたま隣に座っただけの人を連れと勘違いしたらしい。ボケていると言ってしまえばそれまで。しかし、映画館スタッフの女性(原田知代)は「そういう考え方もあるんだなあ」と納得する。

 都会的孤独ということがよく言われる。周囲に人間はたくさんいる。にもかかわらず、関係性が疎遠なため、孤独感がいっそう迫ってくる感覚。確かにそうだ。でも、よく考えてみると、当たり前のことだが近くに人がいることもまた事実。ほんのひとときでも居合わせた偶然、それをちょっと努力して自覚化すれば一つの人間関係が出来上がる。そうしたささやかなシーンを描き出した映画である。

 狂言回しとなる小林聡美は「どこかで会ったような気がするけど誰だか思い出せない」「特徴がつかみづらくて似顔絵が描けない」などど言われてしまう。ある意味、匿名性を具象化したキャラクターと言ったらいいか。しかし、彼女の示す表情をみんなしっかり感じ取っている。匿名の第三者のように見えても、きっかけさえあれば印象に残る関係となる。そういうものだ。

 どうでもいいけど、小林聡美、加瀬亮、ちょい役のもたいまさこ、光石研、市川実日子といった顔触れや全体的にまったりした空気感は、いかにも荻上直子系の映画だな。

【データ】
監督:松本佳奈、中村佳代
83分/2011年
(2011年10月28日、新宿ピカデリーにて)

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