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2011年9月 5日 (月)

兼原信克『戦略外交原論』

兼原信克『戦略外交原論』(日本経済新聞出版社、2011年)

 現役外交官による外交概論。大学での講義をもとにまとめられたらしい。全体的な論旨は至極まっとうで、特に違和感はない。文明論的に大きな視座を意識しながら外交の要諦を語りつくそうという意気込みに私は好意的ではあるのだが、ただし、話が大きすぎると、個々の歴史的話題などでディテールの粗さが目立ってしまうというもどかしさは否めない。

 戦略を組み立てるには、そもそも何を守るのかという問題が当然ながら出てくる。それは通常、「国益」と表現されるが、ここの議論で価値観に関わる問題にページの多くを割いているのが本書の特徴であろうか。生存本能に基づく倫理感情、普遍的な良心といったものに着目して古典も援用しながら説明しようとしているのだが、どうしても隔靴掻痒の感は免れない。哲学や思想の古典に典拠を求めているからといって、その議論全体の質が高まるわけではない。よほど表現を工夫しないと陳腐化せざるを得ないテーマだけに説得力としての深さは残念ながら感じられず、感覚的な抽象論を政治外交という具体論の中に置いたときの居心地の悪さばかりが際立ってしまった。

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