古田和子『上海ネットワークと近代東アジア』
古田和子『上海ネットワークと近代東アジア』(東京大学出版会、2000年)
・19世紀後半、上海は世界経済と東アジア地域経済とを接合する位置にあり、中国という枠組みにはとらわれず東アジア全体にとってのディストリビューション・センター。中国を一つの自己完結的な国民経済と捉えると国境を超えた動態が分からないという問題意識から上海ネットワークに注目。
・上海を中心に放射線状にのびたネットワークの一つとして、例えば神戸(1868年開港)も位置付けられる。イギリス製綿製品→上海で中国商人が仕入れて神戸へ輸出というルート。
・イギリス製綿製品→上海→長崎→朝鮮の開港地というルート(統計上は日朝二国間交易のように見えても上海ネットワークの一環という側面)。
・やがて上海─仁川ルート:山東系の中国商人が仁川へ進出、長崎に居留していた浙江系の中国商人に打撃。
・1870年代にインドのボンベイで近代紡績業→80年代に中国・日本向けに綿糸を輸出。他方、1880年代以降、日本でも紡績工場設立→上海は中国綿花の日本向け輸出元。→「インド紡績業─上海綿糸市場」対「上海綿花市場─日本紡績業」という対立構図。
・上海ネットワークを成り立たせていたのは客幇ネットワーク(新規参入の取引コストを逓減、取引の不確実性を低減)。
・19世紀末~20世紀初頭にかけて日本が国家的バックアップにより黄海交易圏(朝鮮半島・北京方面)を主導、上海ネットワークと対抗する構図に。
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