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2011年6月12日 (日)

イアン・ブレマー『自由市場の終焉──国家資本主義とどう闘うか』

イアン・ブレマー(有賀裕子訳)『自由市場の終焉──国家資本主義とどう闘うか』(日本経済新聞出版社、2011年)

・かつては欧米の多国籍企業が国家という枠組みを超えて国際政治を左右してしまうと言われたことがあったが、近年は傾向が変わってきた。すなわち、新興国の政府保有もしくは緊密な関係にある企業が世界経済の中で台頭しつつあり、これらの政府系企業にとっては市場動向など経済的要件ばかりでなく政治的要素が大きい。こうした政府主導の資本主義経済を国家資本主義と呼び(具体的には中国、ロシア、湾岸首長国など権威主義的傾向のある国家)、従来の日米欧を中心とした自由市場主義を脅かしているという認識を本書は示す。
・自由市場主義と国家資本主義との線引きは明確ではなく、指令経済↔自由市場経済というスペクトルにおいて国ごとに様々なヴァリエーションがある。ただし、①一時的な経済再建・景気刺激策としてではなく長期的・戦略的な政治判断として経済介入を行なう、②個人に市場的チャンスを与えるのではなく、国益や支配者層の目的にかなうように市場を利用する、以上の点で国家資本主義は自由市場主義とは根本的に相違する。
・かつての共産主義とは異なって国家資本主義にイデオロギー的普遍性はなく、あくまでも自国の排他的国益追求のための政策手段に過ぎないので、これらの国々が同盟を組むことはない。
・例えば、中国経済は台頭しつつあるとは言っても、アメリカなど他国の市場への輸出によって成り立っており、内需拡大によってアメリカ依存の関係から脱却することは当面は難しい。このような「経済の相互確証破壊」を意識しつつ、自由市場経済の普及へと働きかけていく方向性を提案。

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