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2011年6月18日 (土)

リチャード・フロリダ『クリエイティブ資本論──新たな経済階級(クリエイティブ・クラス)の台頭』『クリエイティブ都市論──創造性は居心地のよい場所を求める』『クリエイティブ都市経済論──地域活性化の条件』『グレート・リセット──新しい経済と社会は大不況から生まれる』

リチャード・フロリダ(井口典夫訳)『クリエイティブ資本論──新たな経済階級(クリエイティブ・クラス)の台頭』(ダイヤモンド社、2008年)

・従来型のワーキング・クラスやサービス・クラスが決められた計画に沿って実行する人々であるのに対し、金銭的報酬よりも内発的動機により、意義のある新しい形態や付加価値を作り出していくクリエイティブ階級がこれからの経済の牽引役として重要になっていく。彼らの仕事への意識やライフスタイルを調査を踏まえ、クリエイティブな能力を集める場所=都市が決め手となるというのが本書の趣旨。
・流動的な労働市場の中で、人と仕事とを結びつける場所。寛容性が高く、多様性に富み、クリエイティビティに開かれた地域で経済発展が進む、こうした場所=都市の条件を考える。著者は都市コミュニティのあり方としてジェイン・ジェイコブスに共感。
・クリエイティブ階級とは言ってもエリート主義ではなく、すべての人々は本来クリエイティブであるはずという前提。ワーキング・クラスでもクリエイティブであり得る例として日本の製造現場を例示、日本では現場の労働者自らが工夫をこらしており、そうした現場の力がアメリカの製造業を追い越したと指摘。
・「地域の経済成長は、多様性があり寛容で新しいアイデアに開放的な場所を好むクリエイティブな人々が原動力となる。多様性があればその場所は、さまざまなスキルやアイデアを持つクリエイティブな人々を惹きつける可能性が高くなる。クリエイティブな人々が混じり合う場所では、新しい組み合わせを生みやすい。そのうえ、多様性と集中が重なることで知識の流れが速くなる。より大きな、多様性に富むクリエイティブ資本の集積が、イノベーションの可能性を高め、ハイテク企業の設立、そして雇用の創出や経済成長に結びついていく。」(313~314ページ)

・要するに、世界がフラット化して「場所」が無意義になったのではなく、人々の創発的出会いが経済を成長させる、その出会いの場所として魅力的な都市の存在感がますます大きくなっているという議論。同時に、これは都市の間の格差を広げていくことにもなる。
・クリエイティビティという概念が分かりそうで分からないのだが、私の解釈としては、差異性によって生み出された新奇性・優位性を経済的価値と結びつけることで、これを仕事とする人々が量的に拡大傾向にあるということか。言い換えると、万人が絶え間なく差異を生み出し続けなければならないわけで、ジグムント・バウマン言うところのリキッド・モダニティ、つまりすべてを個人単位に帰責する流動的な社会の加速化を別の視点から実証した議論だと言えるだろうか。
・差異を生み出す人々の創発的出会いの場所を重視している点では、岩井克人『会社はこれからどうなるのか』で指摘された会社の重要性の議論とも比較できるのではないかとも思った。

同(井口典夫訳)『クリエイティブ都市論──創造性は居心地のよい場所を求める』(ダイヤモンド社、2009年)
・現代産業の重要生産要素たるクリエイティビティはどのような都市に集まってくるのか、その条件は何か? 自己実現、個性磨きに役立つ開放性や活気、こうした心理的ニーズから考察。
・クリエイティブな能力は開放的で魅力のある都市に集まる→特定地域に偏りが生じ、都市間の格差がこれから取り組むべき課題であると問題提起。なお、メガ地域については大泉啓一郎『消費するアジア』(中公新書、2011年)でも主要論点となっている。

同(小長谷一之訳)『クリエイティブ都市経済論──地域活性化の条件』(日本評論社、2010年)
・上掲の議論を踏まえて都市の質を考えるため様々な指標を組み合わせながら経済地理学的に因子分析。
・都市の質としての多様性を考察するため「ゲイ指数」「ボヘミアン指数」といった分析指標を導入しているのが面白い。

同(仙名紀訳)『グレート・リセット──新しい経済と社会は大不況から生まれる』(早川書房、2011年)
・1870年代、1930年代に続いて三度目の大不況としての現代。しかし、これまでも不況のたびにイノベーティブな工夫によって乗り切ってきたのだから、今回も新しいテクノロジーと経済システムを作りだしていける。そうした趣旨から上掲のクリエイティブ階級と都市との結びつきについて論じている。

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