ファリード・ザカリア『アメリカ後の世界』
ファリード・ザカリア(楡井浩一訳)『アメリカ後の世界』(徳間書店、2008年)
・著者は『フォーリン・アフェアーズ』『ニューズウィーク国際版』編集長などを務めたインド出身の著名な国際問題コラムニスト。
・文明史的レベルで現在の国際情勢を俯瞰しながら、アメリカは凋落しているのではなく、アメリカ以外のすべての国が台頭しつつある状況に直面しているという指摘がメインテーマ。
・テロや内戦リスクにおびえる一方で、政治的動揺と経済的繁栄とが共存する現代世界。
・19世紀の大英帝国の覇権は稀有な環境の産物→ドイツやアメリカの台頭に直面して、イギリスはアメリカと争うのではなく、アメリカの台頭に自らを順応させる外交的決断。こうした姿は現在のアメリカが中国の台頭を目の当たりにしているのを髣髴とさせる。
・他方で、当時のイギリスとは異なり、現在のアメリカには軍事的優位性があり、それは財政破綻を招かずに維持されている。しっかりした経済的・技術的基盤、高等教育による人材の吸引・輩出。従って、アメリカ以外の諸国の台頭は世界のGNPにおける占有率を低下させはするが、アメリカの活発な力は維持できる。
・今後は単独主義的なヒエラルキーを求めるのではなく、仲裁者としての役割にシフトすべき。新興諸国を現行の国際システムの枠内にとどまらせて安定化を図るため、アメリカ自身が率先してルールを守る必要。正当性の力→政治課題を設定、自らの政策に向けて他国やNGOの支持を動員できる。
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