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2011年6月26日 (日)

アブラハム・H・マズロー『人間性の心理学』『完全なる経営』

アブラハム・H・マズロー(小口忠彦訳)『人間性の心理学』(改訂新版、産業能率大学出版部、1987年)

・人間の向上心→成長、自己実現、健康を得る努力、自己同一性と自律性の探求、卓越への憧れ。
・要素還元的な捉え方で具体的なリストを並べても無意味、有機的全体性の中で中傷的モデルを示す。
・一つの欲求が充足されても更に高度な不満が現れる、その繰り返しで至高体験は持続するものではない。全生涯を通じて何かを欲し続ける存在としての人間。動機付けの複合的な多様性。目標達成による満足は全体的に複雑な動機付けから人為的に取り出した一例に過ぎない。様々な欲求の間には一種の優先序列の階層がある。
・生理的欲求→安全の欲求→所属と愛の欲求(社会的欲求)→承認の欲求(尊敬への欲求)→自己実現の欲求(自身の本性に忠実であること、なり得るものにならなければならない→一人ひとりにとってかけがえのない存在であることで、一般論に還元はできない)。前四者が欠乏動機(D欲求)であるのに対して、自己実現の欲求は存在動機(B欲求)。
・欲求不満をそれ自体として考えても無意味、基本的でない欲求の剥奪と、パーソナリティーへの脅威(自己実現の禁止)とを区別。
・本能か否かという二分法は無意味。生物的遺伝的決定因は存在するにしても、多くの場合、学習された文化によって抑えられる。本能の残り物としての弱い本能的傾向→有害というわけではなく、この潜在可能性を壊さないよう努力することは文化の一つの機能。
・対処行動:手段─目的の道具的な行動。表出行動:無意識の、動機付けられていない行動。
・自己実現的人間の調査:自己中心的というよりも課題中心的な人間。不安定な人々に見られる内観性とは対照的。欠乏動機よりも成長動機で動く→満足や良き生活を規定するのは社会的環境ではなく、内なる個人の自律性。利己的/利他的という二分法は解消された状態。

アブラハム・H・マズロー(金井壽宏監訳、大川修二訳)『完全なる経営』(日本経済新聞社、2001年)

・ユーサイキア(Eupsychia):マズローの造語。現実的可能性や向上の余地、心理学的な健康を目指す動き、健康志向。
・個人の成長→企業は自律的な欲求充足に加えて、共同的な欲求充足をもたらすことが可能。
・自己救済→自分に運命付けられた「天職」をやりとげること。例えば、黒澤明監督の映画「生きる」。こうした志向性はおのずと自己超越、自己を追求すると同時に、無我でもある。自己/利他、内的/外的、主観/客観といった二項対立は解消(仕事の大義名分も自己の一部に取り込まれているのだから)。
・研究課題→「人間の尊厳を奪ったり、損なったりしない組織を作るにはどうすればよいのか。組み立てラインのような非人間的な環境は、産業界では避けることができないが、こうした環境を浄化し、労働者の尊厳と自尊心をできる限り保つためには、どうすればよいのか──」(96~97ページ)。
・マグレガーのX理論(人間は一般に怠惰→管理は命令。低次の欲求に対応)とY理論(人間は本当は働きたい→自発的な創造性を生かす。高次の欲求に対応)はマズローの動機付け、自己実現の理論を応用。晩年のマズローはさらに、経済的欲求の次なる段階として価値ある人生や創造的な職業生活を求めるものとしてZ理論を構想。
・産業的権威主義に対して、自律的な人間モデルによる民主主義的なものとしての「進歩的な経営管理」→ただし、客観的要件がそろっていることが必要。生存的に厳しい社会では権威主義的上司の方が適合的かもしれない。状況に応じて最高の、機能する管理方法を選ぶこと。
・リーダーシップ:その状況における客観的要件を誰よりも鋭く見抜き、そうであるが故に全く利他的な人間が問題解決や職務遂行に最適→安全の欲求、所属の欲求、愛の欲求、尊敬の欲求、自尊の欲求のすべてが満たされた、自己実現に近づいた人間がリーダーとして理想的。そうでない人間は、自身の欲求充足のレベルで右往左往してしまう。
・ルーキー・ルー・タイプ(打ち込むことのない人間)と参加者タイプ。

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