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2011年5月22日 (日)

【映画】「北京の自転車」

「北京の自転車」

 地方から出てきて北京の運送会社に勤め始めた青年。無口で愚直な彼は慣れない都会に戸惑いながらもとにかくひたむきに汗を流して働きづめの毎日だ。一定額を稼ぎ出せば会社から貸与されている最新型マウンテンバイクを買い取ることができ、独立だって夢ではない。だが、目標まであと一歩というところでその自転車を盗まれてしまった。ショックで仕事をミスしてしまい、解雇の憂き目に会う。意地になって探し出した自転車は不良高校生が乗っていた。中古で買ったんだと主張する彼だが、その彼も家庭や友人関係で事情を抱えていた。

 愚直でひたむきに頑張る人間であっても、その不器用さと社会的立場の弱さゆえに報われないという人生の不条理を描き出した映画である。自転車を奪われそうになって嗚咽をもらす青年、そんな彼を見て自転車なんてまた買えばいいじゃないか、と軽く言い放つ「持てる者」とのギャップ。単に自転車が奪われるというだけでなく、そこに込められている生きていく希望やプライドまでも奪い取られてしまうことを意味するところまで理解されない非対称性。まさに現代の『駱駝祥子』というべきストーリーだ。自転車を盗まれた青年と、中古自転車のつもりで買った高校生、二人がいがみ合うことになるが、肝心の盗んで売りさばいた者の姿が全く見えないあたり、暗示的なものを感じさせる。近代的な高層ビルと高校生の暮らす胡同との落差には北京の急速な変貌が映し出される。明示はされていないが、セリフの端々から察するに農民工の劣悪な労働待遇という社会背景も描きこまれているのだろう。どうでもいいが、あの美少女は周迅か。

【データ】
原題:十七歳的単車
監督・脚本:王小帥
2000年/中国・台湾/113分
(DVDにて)

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