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2011年5月29日 (日)

大泉啓一郎『消費するアジア──新興国市場の可能性と不安』

大泉啓一郎『消費するアジア──新興国市場の可能性と不安』(中公新書、2011年)

・著者は前著『老いてゆくアジア──繁栄の構図が変わるとき』(中公新書、2007年)で少子高齢化はアジア諸国共通の課題だと指摘していた。他方で、アジア各地の大都市の躍動感あふれる若々しさとのギャップをどのように捉えたら良いのか。本書はこうした問題意識から、国レベルで平均化された経済指標ではなく、メガリージョンやメガ都市と地方・農村との相違、さらには両者の分断が進行しつつある現状に注目しながら、アジア経済のダイナミズムとその背景に伏在する問題を把握しようとしている。
・「ボリュームゾーン」(売れ筋商品の市場)→アジアで拡大しつつある中間所得層に着目して、機能の簡素化などのコストダウンによって販売網を開拓→ボリュームゾーン・イノベーション。現地のニーズに合わせて機能を調整。
・BOP(Base of Pyramid)ビジネスや外国企業による需要掘り起こし、通信手段発達による消費意欲の向上、大量生産・技術革新による製品価格低下→アジアの消費市場拡大。
・たとえて言うと「メガ都市」は東京都、「メガリージョン」は埼玉県、千葉県、神奈川県などを含めた東京経済圏に相当する。このような裾野の広がりを持った北京、上海、バンコク、クアラルンプールといったメガ都市の国際競争力がアジア経済成長の牽引力となっており、その成果がさらに地方・農村まで浸透するかどうかが課題となる。
・タイのタクシン政権は、メガ都市・バンコクの牽引力を強化するため競争戦略を採用した一方、それによって取り残されかねない地方・農村にも目配りした政策を実施、この点で「中進国の課題」を正確に捉えていたと言える。ところが、都市内部の低所得層は軽視されてしまい、これが政治的不安定要因につながってしまったという。メガ都市・メガリージョンは経済成長の重要な牽引役であるが、それを支える社会基盤はあまり強くないという課題が指摘される。

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