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2011年5月 8日 (日)

山室信一『複合戦争と総力戦の断層──日本にとっての第一次世界大戦』

山室信一『複合戦争と総力戦の断層──日本にとっての第一次世界大戦』(人文書院、2011年)

・日本は第一次世界大戦に参戦はしたものの、ヨーロッパのような全面戦争に巻き込まれたわけではないのでその影響は限定的なもの、むしろ戦争特需など余得にあずかった傍観者的なものと思われやすい。対して本書は、当時の日本が直面していた国際問題の諸連関が第一次世界大戦という局面で絡まりあっていた点を再考する必要を提起する。具体的には対独戦争、シベリア戦争(シベリア出兵)という二つの戦火を交えた戦争、対イギリス、対アメリカ、対中国という三つの外交戦、合わせて五つの戦いから成る複合戦争として日本にとっての第一次世界大戦の意義を捉える見取り図を提示、その背景には日本の中国権益という問題が伏在していたことに注意を促す。
・イギリスは、日本が中国権益を単独行動で取ってしまうことを懸念、他方で日本がドイツ側につくのを警戒→参戦要請が揺れ動く。日本の青島攻略に際してイギリス軍は日本の単独行動牽制のため天津駐屯軍を参加させる一方、日本軍はイギリスとの共同出兵を国際的にアピール。
・加藤高明外相は元老への外交文書閲覧を廃止して牽制、外交一元化への試み。他方で彼がイギリスから学び取った外交手法は「旧外交」そのもので時代遅れ、しかし彼が主導した参戦外交の背景には外務省や陸海軍の中堅層から厚い支持があった。
・対華二十一か条要求→日露戦争、第一次世界大戦における日独戦争という二つの戦後処理問題と同時に、英米との外交戦の側面。中国の主権侵害にもなりかねない項目5号は日本の譲歩を演出するブラフとして付け加えられたが、計算が狂って国際的に問題化、乱暴な日本、蹂躙される中国、善意の仲介者としてのアメリカというイメージの広がり。また、日中外交が政府間の外交戦というよりも、国民的対立が表面化する時代への転換点ともなった。
・シベリア出兵は単なる革命干渉戦争ではない→「シベリア戦争」として把握。(ロシア革命→ロシアの対独単独講和を受けて)対独戦争の継続、中国・アメリカとの外交戦の延長、資源獲得の局面、民族自決主義で盛り上がった朝鮮独立運動抑圧など様々な要因が絡まりあっている。

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