【映画】「星を追う子ども」
「星を追う子ども」
郷愁をさそう山間の村、緑が瑞々しい森の中を高台へと駆け上がっていく少女アスナの姿。青白く光る石を使った鉱石ラジオをセッティング、広々とした青空の下、はるかに耳を澄ます彼女の表情は晴れやかでありながら、一抹の孤独感もにじみ出ている。ある日、アスナが正体不明の獣に襲われたところ、シュンという少年が助けてくれた。しかし、姿を消した彼の死体が見つかったと聞いて悲しむアスナだが、シュンと瓜二つの少年に出くわす。そこに戦闘態勢の男たちが現われ、わけも分からず一緒に岩穴へと逃げ込んだ。行き先は地下に広がる伝説の国、アガルタ──。
新海誠のアニメーション作品は、奥行きの広がりを感じさせる画面構成の中での映像の叙情的な美しさがいつも気になっていて、ついつい観に行ってしまう。ただし、あくまでも彼の作る映像が好きなのであって、ストーリーそのものにはそれほど感心していない。例えば、前作「秒速5センチメートル」のノベライズやコミックを一応手に取ってはみたが、話が甘すぎて甘すぎて、とてもじゃないが食えたもんじゃない。
…とは言うものの、今回はストーリー的にもよく頑張っているなと思った。要するに、古事記に出てくるイザナギが亡きイザナミに会いに黄泉の国へ行く話を換骨奪胎して無国籍的ファンタジーに仕立て上げたといった趣きだ。しかし(と再び逆説だが)、よく出来ている、とは思いつつも、何か見たことのある雰囲気だなあ、というモヤモヤ感も同時に沸き起こってきた。これはキャラ的にも設定的にも宮崎アニメの路線だな。ナウシカ、ラピュタ、とりわけ映画化はされていないが『シュナの旅』を思い浮かべた。まあ、だからこそストーリーの部分は安心しながら新海さんの映像をじっくり堪能できたわけではあるのだが。
【データ】
原作・脚本・監督:新海誠
2011年/116分
(2011年5月21日、新宿バルト9にて)
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