【映画】「4月の涙」
「4月の涙」
1918年、フィンランド。ロシア革命に際して帝政ロシアから独立を宣言したものの、革命の進展に伴って翻弄される形でフィンランド国内でも赤軍と白衛軍とが血みどろの内戦を繰り広げている。
赤軍女性部隊が白衛軍に追い詰められ、残虐に殺されるシーンから始まる。ただ一人生き残ったリーダー格のミーナ。居合わせた白衛軍の青年士官アーロは「こんな殺害は非合法だ、彼女たちには捕虜として正当な裁判を受けさせなければならない」と主張、かねがね尊敬していた人文主義的な作家で判事のエーミルがいる裁判所へと彼女を連行する。途中、乗っていた船が難破して無人島に漂着、このときアーロの心中にミーナへの愛情が芽生える。ようやくたどり着いた裁判所で出迎えてくれたエーミルは、正義の名の下、赤軍捕虜へ死刑判決を量産する殺人鬼になっていた。ホモセクシュアルのエーミルは実直で凛々しいアーロに好意を寄せ、ミーナとの関係を詮索する。内戦という異常事態の中、欲望と血とがまとわりついた奇妙な三角関係。
見るべきポイントの一つ目は、プライド、愛情、欲望などが混ざり合って矛盾しつつも、やみがたい衝動として三人それぞれを衝き動かしている姿。とりわけエーミルのデモーニッシュな凄みが目を引いた。二つ目は、この映画の背景をなすフィンランド内戦という歴史的事情。この内戦で身近な者同士が殺しあった古傷はフィンランド社会の大きなタブーとしてしばらく尾を引き、そこに敢えて目を向けようというのもこの映画が企画された動機になっているという。
【データ】
監督:アク・ロウヒミエス
2009年/フィンランド・ドイツ・ギリシア/113分
(2011年5月14日、シネマート新宿にて)
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