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2011年4月 4日 (月)

黄自進『蒋介石と日本──友と敵のはざまで』、関榮次『蒋介石が愛した日本』

 黄自進『蒋介石と日本──友と敵のはざまで』(武田ランダムハウスジャパン、2011年)は、スタンフォード大学フーヴァー研究所で公開された蒋介石日記等の史料を踏まえ、彼の視点を軸にしながら日中関係の政治外交史を描き出している。日本留学経験から近代化・国民国家形成など中国自身の課題について学ぼうとしていた一方、日本の大陸侵略に直面して当の日本と戦わざるを得ないはめに陥ってしまった。さらに国民党内の政敵、軍閥、共産党、国際情勢の変動などの絡み合った複雑の局面の一つ一つに対して彼がどのような判断を下したのかがたどられていく。反共という立場からであるにせよ戦後日本の早期復興をうながしていたことが強調される。また、日本の近代化に関心を示しつつも、その視点は軍事的効率性に重きが置かれ、立憲体制や産業政策などへはあまり注意が払われていなかった点も指摘されている。コンパクトながらも全体としてバランスのとれた政治的伝記となっている。

 関榮次『蒋介石が愛した日本』(PHP新書、2011年)も同様に日本との関係に注目した蒋介石の伝記である。女性たちとの関係やエピソード的なことも散りばめられ、オーソドックスな伝記としては読みやすい。ただし、日本との関係を深く掘り下げているわけではない。もしこのようなタイトルをつけるならば、単に親日的だったというレベルではなく、彼の人生観なり政治構想なりに日本という要因がどのような形で入り込んだのかを描いて欲しかったのだが、タイトルからずれているという印象を持った。版元から考えると、ある読者層を当て込んでつけられたタイトルだとは思うけど。

 なお、蒋介石日記を駆使した伝記としてはJay Taylor, The Generalissimo: Chiang Kai-shek and the Struggle for Modern China(The Belknap Press of Harvard University Press, 2009)があり、中国社会の近代化を目指して奮闘した生涯という視点で描き出している(→こちらで取り上げた)。他にも蒋介石関連で読んだ本をいくつかこちらでも取り上げた。

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