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2011年4月17日 (日)

適当に読んだウェーバー関連書

 羽入辰郎『マックス・ヴェーバーの犯罪──『倫理』論文における資料操作の詐術と「知的誠実性」の崩壊』(ミネルヴァ書房、2002年)。ウェーバーの代表的な論文『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』が議論を進めるにあたって依拠していたはずのルター聖書やフランクリン自伝を精査してみると、ウェーバーは自分の議論に合うように恣意的な改竄をしていることが分かった、という趣旨。彼はなぜこんなことをしてまで自分の議論を押し通そうとしたのか?という問題意識から書かれたのが、同『マックス・ヴェーバーの哀しみ──一生を母親に貪り喰われた男』(PHP新書、2007年)。ウェーバーの家族関係に踏み込み、パーソナリティー的な背景から彼の理論展開との関係について推測を進めていく。こちらでは彼は本当は学問が好きじゃなかったんだ、とまで言い切る。あとがきを見ると、ウェーバー研究で有名な折原浩と激しいバトルを展開している様子。資料操作上の間違いは確かだとして、それでウェーバーの議論を全否定してしまうのは飛躍のようにも思うのだが…。私は専門じゃないからどう判断したらいいのか分からないけど、前著を見ると、文献考証の厳密さの割には感情的にクセの強い文体とのアンバランスが不思議な印象を受けた。

 ウェーバーのパーソナリティー上の背景から彼の理論構造を解釈しようとした伝記としてはアーサー・ミッツマン(安藤英治訳)『鉄の檻──マックス・ウェーバー 一つの人間劇』(創文社、1975年)もある。原著刊行は1971年、この頃のアメリカでは例えばエリクソンの『青年ルター』『ガンディーの真理』のように歴史上の人物を精神分析的視点から捉える伝記が流行っていたから、そうした流れの著作と言えるだろうか。

 牧野雅彦『新書で名著をモノにする 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』』(光文社新書、2011年)は、ウェーバーのこの有名な論文を初学者向けに解説する入門書。マルクス、ゾンバルト、ニーチェ、シュミットなどの議論と比較しながらウェーバーがこの論文を通して意図した問題意識を浮き彫りにしていく構成で、単に入門書というのではなく、比較思想史的な関心から読んでも面白いと思う。上掲羽入書の批判にも註で触れられている。同『マックス・ウェーバー入門』(平凡社新書、2006年)は同時代における議論と比較しながらウェーバーの位置付けを考える。彼はドイツ歴史主義的思考を共有しており、個別具体的な因果連関で歴史を把握→一回限りの個性的条件が重なって近代ヨーロッパが成立したと把握、言い換えると条件が違えば別の可能性もあった偶然的結果と捉えられるという指摘に関心を持った。

 高城和義『パーソンズとウェーバー』(岩波書店、2003年)はタルコット・パーソンズの議論におけるウェーバー理解を時系列的に整理している。
・英米型=実証主義的思想潮流と独型=理想主義的思想潮流との統合として主意主義的行為理論を構築しようと試みた(パーソンズは自らの試みの先駆者はマルクスと考えた。しかし、英米的功利主義による欲求充足に個人行為者の動機を求める考え方にマルクスは挑戦しなかった→この点ではデュルケム、ウェーバーの方が勝っていたと結論)。行為の「動機」理解、宗教的理念と結び付けて「価値態度」を織り込みながら理論構築をしていた点をウェーバーから学ぶ。「普遍化概念としての理念型」を機能主義的に純化、システム論により体系化。
・一方、合理化の諸過程が進展→人間がシステムに従属していくというウェーバーの「鉄の檻」のペシミズムにはパーソンズは違和感を持つ。「理念型」は方法的フィクションだが、ウェーバーの議論ではこの中に歴史具体的な意味を入れ込んで実体化しかねない危険、複雑な現実社会の事象に適用すると硬直的に一面化した見方になりかねない可能性。
・近代社会の不安定性→ウェーバーの概念を用いてファシズム分析。合理的・合法的支配としての市民社会が確立されたとしても、伝統社会に逆戻りする危険→カリスマ的パターンとしてのファシスト独裁の登場。
・「現世内的禁欲主義」→伝統社会を突破し合理化過程を徹底的に進めるテコとなるというウェーバーの議論をパーソンズは「突破の社会学」と理解して評価。
・パーソンズの価値絶対主義批判→合理的選択理論、コスト‐ベネフィット分析、市場万能論への批判。

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