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2011年4月13日 (水)

堀江邦夫『原発ジプシー』

堀江邦夫『原発ジプシー』(現代書館、1979年)

・1978~79年にかけて美浜原発、福島第一原発、敦賀原発の現場作業員として働いた潜入ルポ。たとえて言うと、鎌田慧『自動車絶望工場』『死に絶えた風景』の原発労働者版といった感じだ。日記風の記述で、その日その日の被曝線量が克明に記されているのが生々しい。
・ケガをしたら労わられるどころか、どなられる。「ケガをしたら電力会社に申し訳ない」「労災を適用すると日当は6割になるが、労災扱いしなければ全額面倒をみてやる」といった雇用者側の発言。事故隠し、労災隠し。電力会社は原発の安全性を主張するための「配慮」、しかしそれが現場作業員を集める下請け会社、さらには労働者自身にしわ寄せされた構造。釜ヶ崎の日雇い労働者の待遇から抜け出したくてもがく人々の苦衷。ピンはねされた低賃金の上、放射線被曝による遺伝に不安、さらには恐怖を感じながら働く日々。
・設備管理のためアメリカのGE社から派遣されてきた黒人労働者の姿も見える。ろくに英語も話せない人もいて、こちらも明らかに底辺労働者が危険な作業をやらされている。
・1979年にはちょうどスリーマイル島で原発事故が発生。「あっちの労働者は、ずいぶん放射能を食ったろうなあ」といった会話。
・原発のいわゆる「協力会社」の現場作業員に対する待遇は現在では改善されているのだろうか? いずれにせよ、電力供給をまかなうため、こうした人々に身体上の不安もある過酷な作業を押し付けてきたことには考え込んでしまった。

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