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2011年4月15日 (金)

アニア・シーザドゥロ『デイ・オブ・ハニー:食べ物、愛、戦争の思い出』

Annia Ciezadlo, Day of Honey: A Memoir of Food, Love, and War, Free Press, 2011

・著者は「クリスチャン・サイエンス・モニター」「ザ・ニュー・レパブリック」など各紙と契約して中東で活動しているフリーランスのジャーナリスト。
・レバノン出身のやはりジャーナリストである夫と共にバグダッド、ベイルートで暮らしながら取材活動。フセイン政権崩壊後、アメリカへの反発から混乱するイラク。宗派対立やシリア、イスラエルとの関係も絡まって自爆テロや要人暗殺が相次ぎ再び内戦の危機が高まるレバノン。緊迫した政治情勢下でも親しく交わった人々との思い出がつづられる。
・本書のカギとなるのは、文中で折に触れて紹介される、現地で出会った料理の数々。古代以来、紛争の絶え間のない地域ではあるが、人の移動と同時に食材やレシピの交流の広がりもあり、民族や宗派は違っても知らずしらず似たような料理を食べていることもある。互いに憎悪を向け合うような緊張状態だからこそ、食事を共に分かち合うことの意義が改めて確認される。著者がアメリカに戻っても、思い出されるのは戦争ではない。料理をめぐって想起される味、におい、光景、その場に居合わせた友人たちの思い出。巻末にはレシピ付。

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