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2011年3月28日 (月)

菊地章太『義和団事件風雲録──ペリオの見た北京』

菊地章太『義和団事件風雲録──ペリオの見た北京』(大修館書店、2011年)

 むかし、チャールトン・へストン主演、柴五郎役で伊丹十三も出演していた「北京の55日」というオリエンタリズム丸出しのトンデモ映画があったが、あれは1900年、いわゆる義和団事件(北清事変)で北京城内東交民巷に篭城した各国公使館員の戦いを題材としていた。本書の話題はもちろんタイトル通りにこの義和団事件が中心だが、実はもう一つ別のテーマもある。敦煌文書発見をはじめとした東洋学である。どういうつながりがあるのか。接点は、フランスにおける東洋学の泰斗ポール・ペリオである。

 インドシナ考古学調査団の研究員となったぺリオはちょうど義和団事件がおこったとき、漢籍調査のため北京出張中であった。自身で目撃した事件の経過を克明に記した手帳が発見されており、本書は彼のメモを軸に、やはり事件に居合わせた服部宇之吉、柴五郎、守田利遠、ジョージ・モリソンなどの資料も活用、篭城生活の様子をドラマティックに描き出す。合わせて義和団、西太后について一般に流布されたイメージの修正も図られる。

 それにしても若き日のペリオ、敵方の軍旗を奪い取ったり、単身敵陣へとのこのこ入り込んで栄禄とお茶を飲んだり、度胸があるというのか、ワケが分からん奴というか…。実際、彼の行動は事態の収拾に役立つどころか、かえって敵方の憤激をかって猛反撃をくらってしまう結果にもなってしまったらしい。ペリオについてはもちろん文献でしか知らない。東洋学の大学者というイメージしかなかったのだが、意外と破天荒なところがあったのはちょっと驚いた。パーソナリティの一端がうかがえると、彼が残した巨大な学問的業績も、過去のひからびた化石ではなくもっとヴィヴィッドなものとして浮かび上がってくるような気すらしてきて、とても面白かった。

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