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2011年3月 6日 (日)

【展覧会】「シュテーデル美術館所蔵 フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」

「シュテーデル美術館所蔵 フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」

 ドイツ・フランクフルトにあるシュテーデル美術館が改築工事に入り、その間ならばという条件で日本での作品展示が認められたという経緯があるらしい。展覧会タイトルにあるように目玉作品はフェルメールの《地理学者》だが、これ一作のみ。フェルメール来日!と銘打った美術展では必ず同時代オランダ、フランドルの画家たちの作品を並べて水増し(なんて言うと言葉が悪いが…)されるが、今回も同様。無論、フェルメール作品は稀少である上に各地の美術館に散在しているから一括展示なんて極めて困難だから仕方がないし、それに他の展示作品だってなかなか悪くないし。

 一点豪華主義の《地理学者》だが、そのモチーフ解説には工夫が凝らされている。同じ頃に製作された地球儀、地図、コンパス、定規なども合わせて展示、具体的なイメージが湧く。作中人物が身にまとっている青いローブは日本風の着物であることは初めて知った。いずれにせよ、海洋交易国家として世界進出を目指していた当時のオランダならではの世界認識のあり方がこの作品から浮かび上がってくる。このように《地理学者》で示された対外志向を念頭に置きながら他の同時代の画家たちの描いた都市や田園風景などでの人々のたたずまいも見ていくと、当時におけるオランダという国における市民生活のイメージを一体のものとして髣髴とさせて私には面白かった。

 もともとキリスト教絵画では人物画が中心で風景はその背景に過ぎなかったが、風景画そのものが一つのジャンルとして確立されているのはネーデルラント絵画の特色でもあるらしい。アールト・ファン・デル・ネール「漁船のある夜の運河」「月明かりに照らされた船のある川」などに見られる月が放つ淡い光、それからアールベルト・カイプ「牧草地の羊の群れ」に見られる奥行きのある草原の上方にたなびく雲が好きだな。光の淡い描写が空間と静けさとを調和させていると言ったらいいだろうか、印象的に感じた。都市文化の発展に伴って室内画というジャンルが確立したことの社会史的背景は、フェルメール関連の展覧会を見るたびにいつも気になっているところだ。
(渋谷、Bunkamuraザ・ミュージアム、2011年5月22日まで開催)

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