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2011年2月12日 (土)

中尾友則『梁漱溟の中国再生構想──新たな仁愛共同体への模索』

中尾友則『梁漱溟の中国再生構想──新たな仁愛共同体への模索』(研文出版、2000年)

・梁漱溟の名前は以前から気になっていて、検索したら本書を見つけたので目を通した。
・従来の梁漱溟研究:欧米では、西洋科学主義導入による「意味喪失の危機」→克服のため儒教精神を協調という捉え方。在外中国人は、儒教資本主義の基礎としての精神の優越性を強調。中国では、改革開放路線の中で生ずる矛盾を調整・円滑化する精神として見直す、といった傾向→梁漱溟が西洋近代の長所の摂取を主張する一方で儒教的価値を強調したこの二面性をどのように統一的に捉えるか?という問題意識。
・中国社会の現実は西洋とは異なるというリアルな認識、その中で西欧的な自由社会を導入するとただの対立競争になってしまうのではないかという懸念→儒教精神の中に仁的世界、つまり調和的共同的な愛の秩序世界という中国再生のための独自の理念を見出す。
・郷村建設論を主張。共産党とは一面において共通するが、彼らは階級闘争の視点により地主制度打倒という目的に向けて農民を組織→農民の自覚化・組織化を促す点では評価しつつも、闘争は郷村を破壊してしまうと批判。梁漱溟の考えでは、社会構造の立て直し→新秩序の創出→中国の再生をめざすという構想の中で郷村建設論。国家目的に従属させる政治権力ではなく、農民の主体性によって共同組織化、相互扶助。政権とつながると郷村の内部は不安定化・分裂してしまう→在野の社会運動として政治権力とは一線を画したい。
・こうした組織化によって合理的生産的な経営主体を農民の中に創出、その上で工業も振興。そのための手段として生産請負制など「資本主義の補充」。一部の者が先に発展しても、それが共同社会内の他の者にも波及して各自が自律的な経営主体となれる。
・共産党のイニシアティブで中華人民共和国が成立した後も梁漱溟は亡命せず中国に残り、自己批判。
・「思想の革命性」「無産階級精神」などを強く押し出しつつも、個の伸張を重視する視点を内包した共同的関係という基本的な視座は一貫していると指摘される。
・梁漱溟の思想とコミュニタリアニズムとの親近性を指摘。

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