【映画】「心中天使」
「心中天使」
秘密だから言えないというのではなく、自分でも表現しがたいモヤモヤとした鬱屈や苛立ち。分かってもらえないだろうという孤独感はいっそう態度を頑なにし、家族や恋人など周りの人々は心配そうに気遣いながらもどうしたらいいのか分からず戸惑うしかない。この映画で焦点が当てられる三人、ピアノが弾けなくなったピアニスト、なぜか恋人につらくあたるバツイチ男性、新しい恋人を連れてきた母親を冷静に見つめる女子高生、彼ら彼女らもそうした感じであろう。
青一色の写真を澄み渡った青空に重ね合わせるシーンがあった。一人ひとりそれぞれ何かを抱えている。日常もひっくるめた意味でのこの広い世界へと、自分が抱えているこの漠然とした何かも溶け込ませていけばいいということか。ラスト、役割が微妙に変わる。代替可能な人間関係かもしれないが、その中でも日常を引き受けて生きていける。
面白いかどうかと言えばちょっと微妙な感じもする。ただ、普段の街並や人の息遣いのある空間をさり気なく切り取った映像が私は好きで、その中で俳優さんたちの表情がどのようにかみ合っているのかを見るのが楽しみ。そうした点で私としては必ずしも嫌いではない。尾野真千子の父親役は國村隼で、尾野のデビュー作「萌の朱雀」と同じ組み合わせだな。
【データ】
監督・脚本:一尾直樹
出演:尾野真千子、郭智博、菊里ひかり、國村隼、萬田久子、麻生祐実、内山理名、ほか
2010年/92分
(2011年2月11日、渋谷・ユーロスペースにて)
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