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2011年1月12日 (水)

《光影詩人──李屏賓》

《光影詩人──李屏賓》(台北:田園城市文化、2009年)

 現在公開中の映画、村上春樹原作でトラン・アン・ユン監督の「ノルウェイの森」を観に行ったが、私にとって一番のお目当ては撮影監督・李屏賓(Mark Lee Ping-Bing)による映像だったと言っても言い過ぎではない。例えば、侯孝賢監督「百年恋歌」「珈琲時光」、トラン・アン・ユン監督「夏至」、是枝裕和監督「空気人形」──思わずため息が出るほど本当に美しい映像だなあと感じた映画がいくつかあり、エンドクレジットを眺めていて、それぞれ監督は違っても撮影:李屏賓という名前が共通して出てくることに気づいたのは、それほど前のことでもなかった。自覚的に彼の映像を観に行こうと考えたのは今回が初めてだ。

 今や台湾を代表する撮影監督、李屏賓。掲題書は、彼が撮影の合間に撮った作品を集めた写真集であり、先日、台北の書店の美術書コーナーで面陳されているのを見かけて購入した。

 本人の風貌を見ると、まるで山賊か鬼軍曹かといった感じのいかつい強面だ。この人が、あのカラフルだが落ち着きがあり、繊細で叙情的に美しい映像をつくっているのかと思うと、正直、あまりのギャップに驚いた(序文を寄せている映画監督何人かもそういう趣旨のコメントをしている)。巻末には彼へのインタビューが収録されており、生い立ちからこれまで関わった映画作品について語っている。パーソナリティーとしては風貌通りに一徹な職人肌という印象も受ける。水墨画に関心があるというのが意外だった。とりわけ李可染の山水画が好きだという。李屏賓の奇を衒わないのに印象が強く迫ってくる風景の撮り方は、山水画の落ち着き払った美しさと相通ずるものがあると言えるだろうか。

 彼は侯孝賢をはじめ東アジアを中心に著名な監督たちと一緒に仕事をしており、フィルモグラフィーからいくつか下に書き抜いておく。
1984「策馬入林」(「逃亡」)王童監督
1985「童年往事」侯孝賢監督
1986「恋恋風塵」侯孝賢監督
1987「稲草人」(「村と爆弾」)王童監督
1989「悲情城市」侯孝賢監督
1993「戲夢人生」侯孝賢監督
1994「女人四十」許鞍華監督
1998「海上花」(「フラワーズ・オブ・シャンハイ)侯孝賢監督
1999「心動」(「君のいた永遠」) 張艾嘉監督 
2000「夏天的滋味」(「夏至」)トラン・アン・ユン監督   
2001「花様年華」王家衛(ウォン・カーワイ)監督
2001「千禧曼波」(「ミレニアム・マンボ)侯孝賢監督
2002「小城之春」(「春の惑い」)田壮壮監督   
2002「想飛」(「プリンセスD」)張艾嘉監督   
2004「珈啡時光」侯孝賢監督   
2004「一個陌生女人的來信」(「見知らぬ女からの手紙」)徐靜蕾監督
2005「春の雪」行定勲監督
2005「最好的時光」(「百年恋歌」)侯孝賢監督
2006「父子」譚家明監督
2007「紅気球之旅」(ホウ・シャオシエンのレッド・バルーン)侯孝賢監督
2007「太陽照常升起」姜文監督
2007「不能說的•秘密」(「言えない秘密」)周杰倫(ジェイ・チョウ)監督
2007「心中有鬼」騰華濤監督
2008「今生,緣未了」(「Afterwards」)Gilles Bourdos(吉爾布都)監督
2008「親密」岸西監督   
2009「トロッコ」川口浩史監督
2009「空気人形」是枝裕和監督   
2009「殺人犯」周顯揚監督
2009「ノルウェイの森」トラン・アン・ユン監督

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