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2011年1月 8日 (土)

台北旅行メモ2

◆1月2日(日)
【深坑へ】
・小雨が降ってもおかしくない感じの曇り。MRT木柵線に乗って木柵車站まで行き、ここでバスに乗りかえて深坑で下車。
・深坑老街は台北からの日帰り観光で賑わう街と聞いていたが、まだ午前9時前なので歩いている観光客はあまり見かけない。台湾で地元民も集まる観光地というのはどこも買い食いメインの街並みだ。お店はちょうど準備を始めているところでそれなりに活気はある。老街はところどころ工事中で、おそらく観光用に改めて街並みを整備しようということなのだろう。商店街の中で櫛の歯が欠けたように取り壊された箇所を覗きこむと、いわゆる騎楼の建築は隣家と密着した建て方なので、ひさしの跡が隣家の壁にしっかり残っている。路上観察学の分類で言うと「原爆型」というやつだ。台湾ではこのタイプをよく見かける。深坑老街は小ぶりな街並みで、片道15分もあれば反対側まで行き着いてしまう。ゆっくり観て回ってもそれほど時間はかからない。
・朝食を摂ってからまだ時間が経ってないので腹はへっていないのだが、深坑は豆腐料理で有名と聞いているので、何か口に入れないといけないような気分になった。お店の軒先にある大鍋で豆腐料理がグツグツ煮込まれているのを見かけ、注文した。中に入って座って待っていると、麻辣豆腐鍋を小型のコンロに載せて持ってきてくれた。日本の木綿豆腐よりも身がぎっしりつまった感じの豆腐をハフハフとほおばる。寒天のようなものも入っている。色合いはレバーのようにも見えるが舌触りはゼリーみたいだ。おそらく鴨血とはこれのことか。以前に何かの本で血を固めてゼリー状にしたものだと知ったときにはあまり食べる気はしていなかったが、口に入れてみると意外にクセはない。メニューを見ていたら客家料理の項目もあった。この辺りは客家の集落なのだろうか。

【平渓へ】
・次の目的地の平渓まで行くつもりでバス停に戻った。時刻表には木柵発10:45となっており、ここまで15分くらいかかったと思うので、11:00を目途に待つ。バスは結構混んでいた。蛇行する坂道をブンブンとばしていくので、吊り革につかまりながらも体が大きく揺れる。途中、菁桐を通りかかり、観光客が何人か下車。ローカル鉄道・平渓線の終着駅で、以前に下車してこのあたりを歩いたことはあった。この人気のない大通りはどこまで行くのだろうと思った記憶があるが、今回はその木柵・深坑方面からバスで来たわけだ。なお、霍建起監督「台北に降る雪」(台北飄雪)という映画を観たことがあるが、その舞台がこの菁桐を中心とした平渓線沿線だった。平渓線沿線のレトロな街並みにはなかなか風情があり、映画の舞台としてよく使われる。例えば、鄭芬芬監督「午後三時の初恋」(沈睡的青春)は沿線の十份を舞台にしていたが、他の映画でも平渓線沿線だと明示されてはいなくとも風景として使われているのをよく見かける。
・平渓で下車。バスの通る道路から川を隔てた反対側に平渓老街がある。歩いていきぶつかった十字路に観光案内板があり、日拠時期防空洞というのが目に入ったので行ってみた。平渓線の線路下をくぐって坂道をのぼり、十分ほど歩いたろうか、お寺の前を通り過ぎたところ、土が露わになった傾斜面に穴が五つ穿たれていた。そばの案内表示に日拠時期防空洞とある。緊急避難用に穴を掘っただけという感じで、コンクリなどで固められているわけではなく、防空壕だと言われなければ見過ごしてしまう。このあたりには炭坑が密集していたらしいから、それが米軍の爆撃目標になったのだろうか。台湾各地を歩いていると、戦争末期に作られた防空壕は意外とよく見かける。とりわけ駅や役所など公共施設や日本人住宅地跡で見かけ、そういうのはおそらく日本人用だったのだろう、コンクリでしっかり固められたものだったが、この平渓で見かけたような素朴な洞穴状のものはなかなか気付かない。
・平渓線は川の流れる谷間を走る路線で、川岸にへばりつくように街並みが点々としている。お寺の前がちょっとした展望台になっていて平渓の街並みを上から見下ろせる。駅にはちょうど列車が到着したところで、カメラを抱えた鉄道ファンが群がっている。発車する列車を線路間際から撮影しようとする人もいるため、車掌さんが注意の呼子をピーピー鳴らしているのがここまで聞こえてきた。台湾では鉄道ファンに限らず、デジカメではなく本格的な一眼レフカメラを持参している人をよく見かける。カメラ熱は日本以上らしく、街中でも例えばニコンの広告ポスターをよく見かけた。

【基隆へ】
・列車が私の目の前を通過するのを見届けてから、老街へ向けて坂道を降りた。先ほどの十字路まで戻ると、列車から降りた観光客が三々五々歩いているのと行き会う。駅に行き、基隆まで切符を買う。菁桐から戻ってきた先ほどの列車に乗る。ガイドさんに連れられた日本人観光客グループも一緒に乗り込んできて、彼らは十份で降りていった。車窓の風景を眺めるが、外は寒々とした曇天。瑞芳で幹線列車に乗り換え、さらに八堵で基隆行きに乗り換える。それぞれで30分ほど待たなければならず、接続は悪い。基隆到着は13時過ぎ。
・基隆は以前、暗くなってから夜市を歩いたことはあるが、日中は初めてかもしれない。駅前の海関大楼は日本統治期から使われ続けている建物。あたりを歩きながら港へ向かうと、太鼓をドンドコ叩きながら何やらセレモニーをやっている。グリーンピースの船がちょうど接岸するところで、その歓迎式典のようである。
・中正公園へ行った。入口から急な石段をのぼる。のぼった先にある忠烈祠はかつて日本統治期の基隆神社だったところであり、この石段もいかにも神社らしい。台湾各地の忠烈祠はたいていかつての日本の神社をつぶして建てられている。さらにのぼっていくと公園になっており、基隆港が見下ろせる。人はほとんどいない。駅に戻った。平渓線沿線歩きに意外と時間がかからなかったので、その分、基隆歩きをすればよかったかもしれないが、下調べをしてきていないので今回は切り上げた。

【国立歴史博物館】
・台北まで戻り、MRTに乗って中正紀念堂駅で下車、歩いて10分弱で国立歴史博物館に到着。我ながら意外だがここに来るのは初めてだ。
・特別展示は「盛世皇朝祕寶-法門寺地宮與大唐文物特展」。陝西省・西安近くの法門寺で1987年に地下宮殿が発見され、そこからの出土品を中心に唐代の文物を展示。仏舎利容器や唐三彩など。大秦景教流行碑の拓本もあった。仏教文化・西域文化の影響なども見られる。こういうのも私は好き。北京の収蔵庫で唐三彩が改めて見出されたとき、これをどのように名づけようかと議論され、多彩釉→「多」を象徴する数字として「三」という数字が使われたという説明は初めて知った。唐三彩は主に明器(お墓の副葬品)として製造された。文化的には胡風、貴族・官僚階層の厚葬といった特徴があるわけだが、安史の乱以降、商人階層が勃興して厚葬の風習がすたれ、従って副葬品が作られなくなったため唐三彩は衰微したとされる。
・二階では「館蔵華夏文物」の常設展示。土器・石器・青銅器から明清期の青磁までモノという観点から中国史をコンパクトに解説した展示としてよくまとまっている。ここはすいているから穴場かもしれない。窓際の展望席からは庭園がよく見えて気持ちが良い。確かここは、日本統治期の植物園だったところではなかったか。
・三階では中国近現代水墨画名家の特集展示。清朝・民国期以来、中国画らしさを追求してきた画家たちとして齊白石(1864-1957)、黃賓虹(1864-1955)、溥心畬(1887-1963、清朝皇族)、張大千(1899-1983)など、西欧や日本に留学して技法の革新を図った徐悲鴻(1895-1953)、黃君璧(1898-1991)、林風眠(1900-1991)、傅抱石(1904-65、日本へ留学)など、これらを受け継ぐ形で様々に展開していった李可染(1907-1989)、林玉山(1907-2004)、劉延濤(1908-2001)、傅狷夫(1910-2007)、江兆申(1925-1996)、吳冠中(1919-2010)などの作品が展示されていた。
・徐悲鴻の名前は中国美術史でよく見かける。林玉山は日本統治期から画家として活躍していた人で、作風の一つとして膠彩画が紹介されていたが、これはすなわち日本画のことだ。「黄牛」(1941年)、「蒼松白鹿」(1940年)があった。私は日本統治期の台湾人の伝記的事実関係にジャンルを問わず関心があり、彼の口述をまとめた本をミュージアム・ショップで見かけたので購入した。林風眠という人はフランスに留学してフォービズム・キュビズムの影響を受けた上で水墨画を描いていた人で、筆致が独特で興味を持ち、彼に関する本も購入した。水墨画的に繊細な線でさらっと描かれた細面の裸婦像は何となく小島功のエッチな仙人ものにも似ている。それから、侯孝賢などの映画撮影で有名なカメラマン李屏賓の写真集《光影詩人 李屏賓》(田園城市出版、2009年)を書店で見かけて購入したのだが、彼は水墨画が好きで、とくに李可染が好きだという趣旨の発言があった。
・国立歴史博物館の閉館時間は18:00で、ミュージアム・ショップで何冊か本を買い込んでから外に出る。すでに暗い。いったん宿舎に戻って荷物を置いてから、再び外出。
・MRTに乗って剣潭で下車。士林夜市へ。すでに混雑は始まっており、まだ19:00頃だから時間が経つに連れてもっと込み合うことになるだろう。まだ歩いたことのなかった通りもぶらつく。ここの夜市が門前市として始まったという慈諴宮にも入ってみた。行列のできていた夜店で小吃をいくつか買い食いして、夕飯がわりとする。葱油餅は文字通り葱油で揚げたパンみたいなもの、シンプルで食べやすい。揚げたての胡椒餅はおいしいのだが、噛むたびにたっぷりの肉汁がはねて、手がべとべと、服も汚れ、唇が少し火傷気味になってしまった。ドーム式の美食市場もざっと見て回ってから剣潭車站まで戻り、MRTを乗り継いで市政府站で下車、今晩も誠品書店信義旗艦店へ行ってぶらぶらと棚を見て回る。

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