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2010年5月16日 - 2010年5月22日

2010年5月22日 (土)

丸川哲史『台湾ナショナリズム──東アジア近代のアポリア』、本多周爾『台湾──メディア・政治・アイデンティティ』

 台湾におけるナショナル・アイデンティティをどのように捉えるかというテーマは、台湾問題としてのみ自己完結することはなく、中国や日本など周辺のナショナリズムとも絡み合い、どの立場・視点に立つかによって議論の性質も大きく変わってくるという難しさをはらんでいる。台湾ナショナリズムと中国ナショナリズムとは両岸の政治経済関係に応じて変化し得るし、台湾における親日感情は日本の右翼的な人々のナショナリズム感情と共鳴するケースが見られる。そして、それらの立場が複雑に対立する。言い換えれば、一つの立場に固執する硬いナショナリズム言説は、現状にそぐわないズレをどうしても露呈してしまうと言える。

 そうした複雑な問題背景を念頭に置くと、丸川哲史『台湾ナショナリズム──東アジア近代のアポリア』(講談社選書メチエ、2010年)が議論の拠り所としている、台湾における近代について「複数のプロセス」として捉える脱「国民国家」論的視点は一定の説得力を持つ。ただし、本書では1920年代における中国革命への関心、福建との土着的連続性など漢族・中国文明としての大陸との接点に注目される一方で、台湾の原住民族の存在については軽く言及される程度なのが気にかかった。漢族系と原住民族系との混血を論拠としたDNA論による台湾ナショナリズムの主張に対する批判は正当であろう。しかし、政治的マイノリティーとしての原住民族の位置付けをナショナリズム論の観点でどのように捉えるのか? これは無視できない論点だと思う。例えば、周婉窈『図説 台湾の歴史』(濱島敦俊監訳、石川豪・中西美貴訳、平凡社、2007年→こちらで取り上げた)は原住民族に配慮した脱漢族中心史観に立って台湾史を叙述しているが、本書では参考文献にも取り上げられていない。議論の流れに入らないから省略したのか、それとも意図的に無視したのか?

 本多周爾『台湾──メディア・政治・アイデンティティ』(春風社、2010年)は、現代台湾における政治とマスメディアとの関係を分析した論文集である。新聞については、聯合報、中国時報、自由時報の三大紙に加え、香港資本の蘋果日報がワイドショー的な誌面構成で参入。台湾では民主化が進展する一方で、各紙はそれぞれに政治主張を明確化、読者も自分の思想傾向に合わせて選択的に購読するため、自らの政治イデオロギーを強化、ナショナル・アイデンティティをめぐる議論でイデオロギー対立が助長されてしまっているという指摘に興味を持った。

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後藤致人『内奏──天皇と政治の近現代』

後藤致人『内奏──天皇と政治の近現代』(中公新書、2010年)

 昔も今も日本政治における天皇の位置付けというのは非常にナーバスな問題をはらんでいるが、本書は、臣下が天皇に対して報告・意見具申を行う「奏上」に注目する。奏上、言上、上奏、密奏、内奏etc.と様々な表現があるが、明治憲法下で政治システムが整備された際、制度化されたものを「上奏」、成文化されていない政治的慣習として行われるものを「内奏」と言う。ただし、実際にはだいぶ混乱していたらしい。太平洋戦争末期、終戦の意見具申を行った「近衛上奏文」は、近衛個人が行った点では「内奏」だが、政治的な意図を込めて「上奏」と表現されたと考えられる。

 戦後、天皇が象徴に祭り上げられたことで「上奏」はなくなったが、「内奏」は慣習として続いている。「内奏」の内容が漏洩すると、場合によっては天皇の政治利用として問題化されることもあった。憲法は変わっても昭和天皇は政治への関心が強かったため、吉田茂、佐藤栄作、中曽根康弘など保守系政治家は折に触れて内奏していた。もちろん昭和天皇が政治的意思決定に関与することはなかったが、天皇の「御下問」が政治家個人の心情に響くシチュエーションもあったようだ。ただし、政治家の世代交代につれて天皇との心情的距離感も開いていく。非制度的な慣習の中に残った政治的関係を窺う視点として興味深く読んだ。

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2010年5月20日 (木)

タイの政治情勢について再掲

 タイで政治的混乱が起きると土壇場で国王が出てきて双方を調停するという場面がいつも見られたが、今回の一連の混乱では国王の出番がない。高齢というのも理由の一つだろうが、それ以前に国王周辺がそもそもタクシン派に反感を抱いているからだろうか。タイの王制そのものが実は行き詰まりつつあるという趣旨の雑誌記事を以前に読んで興味を持った覚えがある。表沙汰にはならないが、皇太子の評判も悪い。この記事の内容については2008年12月17日付「タイの政治情勢のこと」でメモしておいた。

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2010年5月19日 (水)

「プロジェクトJAPAN シリーズ 日本と朝鮮半島 第2回 三・一独立運動と“親日派”」

「プロジェクトJAPAN シリーズ 日本と朝鮮半島 第2回 三・一独立運動と“親日派”」

 日本の植民地支配と親日派というかなりナーバスなテーマである。前回の台湾編ではトラブルがあったが、今回は50分という時間枠を考えるバランスよくまとめられていたように思う。李光洙についてはこちらで取り上げたことがある。番組中でコメントしていた長田彰文『日本の朝鮮統治と国際関係──朝鮮独立運動とアメリカ 1910─1922』(平凡社、2005年)は以前に読んでこちらにメモしてある。

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