渡辺利夫・朝元照雄編著『台湾経済入門』
渡辺利夫・朝元照雄編著『台湾経済入門』(勁草書房、2007年)
・分担執筆により台湾経済の概略を解説。以下、メモ書き。
・1940年代:幣制改革→ハイパーインフレ収束。農地改革(三七五減租、公地放領、耕者有其田)→小作人の保護、自作農化。
・1950年代:米糖輸出先だった日本が外貨流出抑制策→台湾では「一次産品輸出による工業化」政策にとって不都合となり、かわって「輸出代替工業化」→保護政策による「内向き型工業化」。
・1960年代:「外向き型工業化」、輸出加工区の設置。
・1970年代:第二次輸出代替工業化、重化学工業化。ちょうど石油ショックに直面したが、十大建設→外需の落ち込みを内需でカバーできた。
・1980年代:産業の高度化と経済の自由化・国際化。台湾版シリコン・バレーを目指して新竹科学工業園区など。
・1990年代:金融持ち株会社成立期。
・2000年代:民進党→「緑のシリコン・アイランド」を提唱。
・日本植民地統治期における製鉄、機械、肥料、製糖、石油化学などの基幹産業および電力、鉄道、銀行などは国民党政権が接収→公営企業として経済体制を支配→1984年以降、非効率性が問題化して民営化政策へ。
・対案では中小企業が輸出の担い手→貧富の格差を拡大させずに経済成長。輸出貢献率は1980年代をピーク(7割)→2005年には17.6%まで落ち込み。データ算定には不明確なところもあるが、少なくとも低下傾向は確実にある。従来の台湾経済は、公営企業と民間大企業は国内市場向けに生産、中小企業は輸出向けに生産という「二重構造市場」→グローバル化の進展は大企業に有利。かつては直接輸出志向だった中小企業→大企業との協力関係を構築、大企業を通した間接的な輸出協力者という位置付けになる。
・1980年代以降、従来型経済政策の行き詰まり、アメリカからの市場開放要求、民主化による特権打破→貿易自由化へ向かう。
・貿易・投資構造の変化→周辺アジア諸国(とりわけ中国)との分業の拡大。
・技術イノベーション→公的研究機関が主導。
・社会政策は当初から外省人優位。省籍矛盾による対立から、外省人が台湾人資本に雇用される見込みはほとんどなし→彼らの面倒をみるために国民党政権は雇用確保、社会保障整備。他方で、本省人は放置→彼らは生活共同体の相互扶助に頼る。
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