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2010年12月13日 (月)

頴田島一二郎『カール・ユーハイム物語──菓子は神さま』

頴田島一二郎『カール・ユーハイム物語──菓子は神さま』(新泉社、1973年)

 洋菓子メーカーとして有名なユーハイム。その始祖とも言うべき菓子職人で、バウムクーヘンをはじめ様々なドイツ菓子を日本に紹介したカール・ユーハイムの波乱に満ちた生涯を物語形式で語る。今年の一月にNHKで放映された「歴史秘話ヒストリア 焼け跡とバウムクーヘン~あるドイツ人夫妻の苦難と愛~」も物語形式だったが、この本にだいぶ負っている。

 1886年にライン河畔の小さな町で生まれ、菓子職人となったカールは20歳のとき中国・青島へ行って開業する。ところが第一次世界大戦が勃発して青島は日本軍に占領され、カールは日本の捕虜収容所へ入れられた。この時の捕虜収容所では様々な日独交流の逸話があるが、カールもその中の一人である。バウムクーヘンをはじめとしたドイツ菓子を広島の物産展に出品したところ、大好評でたちまち売り切れた。実は青島にいたときに出会った日本人が、チョコレートの苦さやバターのくどさをいやがっているのを見ていたので、日本人の味の好みに合わせて作ってみたらしい。その結果を見て日本でもやっていけると自信がついた。釈放後は明治屋が銀座で経営するカフェ・ユーロップに三年契約で勤め、弟子も育てる。契約終了後は横浜で開業、ところが関東大震災で大打撃を受け、避難先の神戸で再起する。第二次世界大戦では出征した息子も失い、彼自身は1945年8月14日、終戦のまさに前日に息を引き取った。

 戦後、弟子たちが店を再興し、カールの奥さんだったエリーゼも再び来日、彼女が社長となってカールの遺風を受け継ぐことになったらしい。どこか愛嬌のある人柄に宿った職人魂が時代の変転に翻弄される姿にはとても濃厚なドラマが感じられる。こうした人物群像には興味が引かれる。

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