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2010年12月20日 (月)

王育徳『台湾海峡』、岡崎郁子『台湾文学──異端の系譜』

王育徳『台湾海峡』(日中出版、1993年)
・台湾語研究の第一人者である著者が、文学評論を通して台湾独立への思いを訴える。
・外省人作家は大陸から放逐された悲哀を表現。しかし、台湾人にとって台湾は唯一無二の故郷であり、中国大陸を知らない→1960年代後半から郷土文学が現われ、外省人作家と論争。当時、台湾人の経済的活動が活発となって国民党政権も無視できなくなっており、そうした社会的風潮の文学的表現と捉える。
・美麗島事件をめぐる作家たちの葛藤。
・陳若曦(アメリカ留学→中国人男性と結婚→祖国“回帰”して中共に投降→しかし、いやな思いをしてアメリカに戻る)、呉濁流、戴国煇の議論を取り上げ、そこに台湾人の“原罪意識”を見出して批判。
・台湾人の“原罪意識”:①華僑として海外に出た者に対する大陸での侮蔑意識。②東夷である日本人に支配されたくせに中国人よりも高い生活水準にある台湾人に対する嫉妬、③台湾人は中国大陸に行っても、日本統治期には日本のスパイ、戦後は国民党のスパイとみなされる→台湾人は中国の政権下に入ると必ず“二等国民”扱いされてしまう宿命→台湾独立しかない。

岡崎郁子『台湾文学──異端の系譜』(田畑書店、1996年)
・戦後台湾の文壇主流からはずれがちな人を中心に、それぞれの作品を紹介するだけでなく、作者に会いに行ってインタビューを行い、その人柄を知り、作品の背景に息づくものを読み取ろうとしているところが興味深い(とりわけ、邱永漢と拓抜斯(トパス)に興味を持った)。本省人、外省人という区別で台湾文学を見るのではなく、作品そのものを見ようという問題意識。なお、著者は台湾大学留学中に黄得時の授業を受けたらしい。
・邱永漢はなぜ台湾文学史で評価されないのか?→①彼は日本語で二二八事件について初めて小説化、しかし国民党支配下の台湾では読めなかった、②彼の作家活動期は短く、すぐに金儲けに行った、③国民党に“投降”→呉濁流たちから文壇への金銭的援助を求められたが拒絶→台湾文壇から反感。
・陳映真:第三世界文学論。共産主義へのシンパシー。台湾文学は中国文学の中に位置づけ→台湾独立論は台湾文学史を捻じ曲げていると批判。
・劉大任:もともと共産主義にシンパシーがあったが、アメリカへ行き、国連勤務、その身分で中国へ行くが、共産主義の実際に幻滅。外国で作品発表。
・鄭清文:童話など純文学路線。
・拓抜斯:ブヌン族の出身。原住民作家という珍しさで注目を浴びてしまうが、彼の表現せざるを得ないものからもっと普遍的なものを読み取りたいという立場で考える。彼自身の生い立ちや家族的背景へのインタビューが興味深い。

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