門田隆将『この命、義に捧ぐ──台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』
門田隆将『この命、義に捧ぐ──台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、2010年)
1949年、中華人民共和国建国の高揚感もあって破竹の勢いにのる共産党軍。対して国民党軍は潰走続きだが、防備の脆弱な厦門からの撤退を早期決断、金門島で防備を固めて共産党軍を撃退、海峡両岸対峙の状況が固定化された。日本敗戦後、密かに台湾へ渡って金門島・古寧頭戦役で作戦指導を行なった根本博を描いたノンフィクション。
根本の活躍を描く筋立ては読む前からだいたい予想していたのだが、旧台湾総督府関連人脈に焦点を当てているところに本書の新味がある。根本は結果として蒋介石に協力したことになるが、根本の台湾密航を手引きした台湾人たち自身の目的はあくまでも台湾防衛であって、国民党にはむしろ反感を持っていたらしい。このあたりの思惑のギャップが興味深い。
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