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2010年12月12日 (日)

フェアトレードについて手当たり次第に読んでみた

 フェアトレードについてよく知らないことに今さらながら気づいて、手当たり次第に読んでみた。おおまかに理解したところでは以下がポイントになるかな。

・市場原理に基づいて国際貿易が行なわれる場合、本来ならば条件の均等が前提となる。しかしながら、実際には情報や流通経路などの非対称性により、仲買人(コヨーテ)や商社が発展途上国の生産者の作物を安く買い叩き、顧客に対して安さをアピールしながら中間マージンの最大化を図る。不利な立場に置かれている生産者は従属化、貧困状態から抜け出せないという悪循環に陥ってしまう。これに対して、(主に先進国の)消費者の側で、良いモノには割高でも適切(フェア)な代価をきちんと支払うという態度をまず示す。良いモノを作るにはそれだけのコストがかかるわけだから、適切な代価を生産者側にきちんと還流させていくことで、経済水準・生活水準の向上、持続的にモノづくりができる環境の整備を図っていく。このように生産と消費の関係を見直して好循環へと転換させることによって、途上国の生産者が置かれた貧困から抜け出す機会を保障するというのがフェアトレードの基本的な考え方。
・援助だとパターナリスティックな依存関係を生み出してしまう。これに対して、個々の生産者が自立できるようにエンパワーメントを進め、生産者自身の尊厳に敬意を払いながら、貿易という経済活動を通して持続可能な形で、先進国と途上国との対等なパートナーシップを築き上げていく。
・その土地に根ざした伝統的な手工業技術の見直し、振興という目的。先進国に売り込む場合にはデザインに注目される。
・流通過程のコストから小売価格はどうしても割高になってしまうが、認証制度による保証を通して消費者に安心を提供する。倫理的な評判が高まれば、フェアトレード産品そのものが一つのブランドとして市場にアピールできるかもしれない。認証に必要な基準としては、生産者が劣悪な労働環境に置かれないようにする、環境問題へ配慮する、持続可能な生産コストをカバーできるように最低価格設定や継続的な長期契約、等々がある。具体的にIFATの基準を並べると、①生産者に仕事の機会を提供、②事業の透明性、③生産者の資質向上を目指す、④フェアトレード推進についての啓発、情報提供、⑤公正な対価、⑥ジェンダーの平等、⑦安全・健康的な労働条件、⑧子どもの権利、⑨環境への配慮、⑩信頼と敬意に基づく貿易。
・認証ラベルを貼って、フェアトレードを推進する小規模事業者のショップばかりでなく、スーパーの店頭にも並ぶ。他方で、顔の見える産直関係という理念から外れるのではないか? 認証ライセンスを取るにはそれなりの金銭的コストがかかるので、排除されてしまう生産者が出てくるのではないか?などの疑問も提起されている。

 フェアトレード関連の本はここ二、三年で随分と刊行されたようだが、取りあえず私が読んだ本を並べると、
三浦史子『フェア・トレードを探しに』(スリーエーネットワーク、2008年)は生産、小売、認証団体など現場への取材を通して実際のシステムがどのように運営されているのか、問題点は何かが具体例を通して見えてくるので、最初に読むならこの本がいいだろう。概論的なテキストとしては、渡辺龍也『フェアトレード学──私たちが創る新経済秩序』(新評論、2010年)、アレックス・ニコルズ、シャーロット・オパル編著(北澤肯訳)『フェアトレード──倫理的な消費が経済を変える』(岩波書店、2009年)が網羅的に整理されている。この二冊は、ある程度具体例を知った上で読んだ方が理解は深まる。
長坂寿久編著『日本のフェアトレード──世界を変える希望の貿易』(明石書店、2008年)、長尾弥生『みんなの「買う」が世界を変える フェアトレードの時代──顔を暮らしの見えるこれからの国際貿易を目指して』(日本生活協同組合連合出版部、2008年)では、フェアトレードの概略紹介だけでなく、日本で実践している取り組みが紹介されている。
・ニコ・ローツェン、フランツ・ヴァン・デル・ホフ(永田千奈訳)『フェアトレードの冒険──草の根グローバリズムが世界を変える』(日経BP社、2007年)は、最初のフェアトレード認証団体「マックスハヴェラー」を創立した二人が、どのような経緯でこの活動に取り組むようになったのかを記している。
・フェアトレードの取っ掛かりはコーヒーから始まったらしい。村田武『コーヒーとフェアトレード』(筑波書房、2005年)は最近、コーヒー輸出国として急成長するベトナムなどへの調査をもとにしている。清田和之『コーヒーを通して見たフェアトレード──スリランカ山岳地帯を行く』(書肆侃侃房、2010年)は、有機無農薬のコーヒーを求めて行ったブラジルでフェアトレードを知り、スリランカでコーヒー栽培の支援をしている人の体験記。
サファイア・ミニー『おしゃれなエコが世界を救う──女社長のフェアトレード奮闘記』(日経BP社、2008年)は、イギリスから日本に来て、衣料品のフェアトレード・ビジネスを起業した女性の体験記。この業界では有名な人らしい。

・なお、ジョセフ・スティグリッツ、アンドリュー・チャールトン(浦田秀次郎・監訳、高遠裕子訳)『フェアトレード──格差を生まない経済システム』(日本経済新聞出版社、2007年)は、発展途上国の経済的成長のためには世界貿易システムへの参加が必要であるが、そのための条件が十分でない問題点についてマクロ経済学的に論じた本で、上掲の議論とは大きな問題意識は共有されているものの、テーマは異なるので要注意。

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