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2010年12月23日 (木)

エズラ・F・ヴォーゲル『アジア四小龍──いかにして今日を築いたか』

エズラ・F・ヴォーゲル(渡辺利夫訳)『アジア四小龍──いかにして今日を築いたか』(中公新書、1993年)

・ちょっと古い本だが、当時どんな議論をしていたのか確認するために目を通した。
・東アジアNIES、すなわち台湾、韓国、香港、シンガポールの発展:①反共→アメリカの開発支援、②国際貿易の進展により市場拡大、③欧米における消費拡大がその市場拡大を支えた、④情報革命→新情報へのアクセス容易、⑤多国籍企業の進出から便益。
・台湾:中国大陸で工業化に失敗した国民党政権はなぜ台湾で成功? 色々問題はあったにしても一応の政治的安定性。日本植民地支配が残した産業基盤と人的資源。アメリカの援助。大陸出身のテクノクラート(尹仲容、李国鼎など)。蒋父子は大陸で腐敗・汚職のために失敗したことから教訓→企業利益との癒着を防止。
・国内市場狭小な都市国家という点では同様でも、香港は自由放任的であったのに対し、シンガポールは政府主導の経済政策。
・状況的要因:①アメリカの援助。②日本の植民地支配・侵略が伝統的旧秩序を崩し、新たなリーダーシップを可能にした。③政治的・経済的緊張感→権威主義的政権の存立→秩序維持、政策推進。④勤勉で豊富な労働力。⑤日本型成功モデルへの理解。
・儒教的伝統が工業化に資したとは言えないが(近代的教育システムと儒教道徳は関係ない、またかつては儒教道徳こそが近代的発展を阻害という議論があったことを想起すべし)、他方で産業構造上の心性を指摘して“工業的ネオコンフュ-シャニズム”と名づける:能力主義の官僚エリート、入学試験制度、集団重視、自己研鑽。

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