林鍾雄『台湾経済発展の歴史的考察1895~1995』
林鍾雄『台湾経済発展の歴史的考察1895~1995』(交流協会、2002年)
第1章 台湾経済発展の基礎
・日本植民統治期→生産力の育成、教育と衛生→台湾の人的資源向上。
・糖米経済→日本人自身の利益のためではあっても結果として半自給自足的な閉鎖経済から輸出指向経済へと誘導。
・アメリカによる経済援助
・多国籍企業の台湾投資(日本企業)
・台湾は貯蓄過多→投資の機会を逸している。
第2章 日本統治下台湾の糖米経済と工業化
・治安維持、インフラ投資(電力→工業化に必須)、貨幣・度量衡の統一と銀行の創設。
・台湾の糖業:資本家の蔗作農家に対する搾取と日本の関税保護下で発展。
・米の増産:水利改善、肥料奨励、蓬莱米奨励→日本へ輸出。その一方で、廉価・低品質の米を南洋から輸入、甘藷の作付面積拡大→台湾人は米に混ぜて食べた。
・工業化:台湾は日本製品の市場。パイナップル缶詰製造→農産品加工輸出。南進政策に応じて自給自足的工業の展開。南洋のボーキサイト→台湾でアルミ生産すれば輸送費節減、安い電力を利用できる。
第3章 1940年代の台湾経済
・日本植民地期にインフラと勤勉な労働力が形成されても、きちんとした政策と技術者がいなければ経済再建困難。
・国民党政権のため資金供出、中国大陸との為替取引→輸入インフレ、人口激増→需要圧力。
第4章 台湾の対外貿易100年の歩み
・日本植民地期の糖業による輸出業は没落→1960年代の輸出指向的経済開発では製造業が中心となった。
・日本植民地期の経済政策や1960年代の多国籍企業進出は台湾にとって受身の経済開発。他方で、多国籍企業の薫陶を受けた進取の精神を持つ企業家が群生→自立的な経済へ。
補論 台湾の輸出主導型経済発展とその中国に対する啓示
・台湾の成功要因:①相対的に整備されたインフラ。②国際市場の拡大。③外貨節約のための輸入代替工業化を選択。④外国企業の投資→民間企業家の創業精神を誘発。⑤産業構造を不断に調整。
第5章 100年来台湾の国際収支と経済発展
第6章 台湾経済発展の活路
・資源乏しい→輸出しかない→しかし、労働集約型産業による発展途上国との価格競争はもはや無理→高所得消費群を相手にする。ハイテク産業。
第7章 糖米経済から科学技術立国へ
・孤立経済→日本と一体化→1940~60年代の経済暗黒時代→台湾・アメリカ・日本の3軸経済関係→APECの一員
第8章 美麗島の再建
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