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2010年11月16日 (火)

朴贊雄『日本統治時代を肯定的に理解する──韓国の一知識人の回想』

朴贊雄『日本統治時代を肯定的に理解する──韓国の一知識人の回想』(草思社、2010年)

 私自身としては肯定、否定といった二分法的な価値判断を前提として歴史事象を考えることに馴染みがないことをまずお断りしておく。

 本書は日本植民地下の朝鮮半島で過ごした青春期を回想した手記を中心としており、原文自体が日本語で記されている。だいぶ恵まれた家庭環境に育った人のようで、日本人に対する敵愾心はない。母方の親戚には呂運亨もいたという。ある時代経験を振り返るにしても、その人がどのような立場にいたのか、どのような人々と付き合っていたのかによっても世の中の見え方はかなり違ってくる。様々な立場の人にどのように見えていたのかをつき合わせることにより、後知恵で意味づけをせざるを得ない後世の歴史認識をできるだけ相対化していくという点で、本書に回想される上流階層の生活や学校のエピソードは興味深い。

 著者は、北朝鮮の共産主義政権、韓国のかつての軍事政権、双方に対して批判的な立場を取っている人で、1970年代以降はカナダに移住していたらしい。ちょっと深読みにはなるが、韓国社会の現実に対する批判がその反措定として日本に対する親近感を芽生えさせているようにも思われる。こうした形の心情は台湾の懐旧老人によく見られる。繰り返しになるが、そのことの是非を問題にするつもりはない。本書を読んだ日本人が、日本の植民地支配は良かったんだ、と無邪気に喜ぶのは不毛な読み方で、むしろ著者のような心理的契機が生まれる政治空間をどのように捉えるのか、そこを汲み取りながら読む方がより一層歴史の理解に資するのかなという気がする。

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