【映画】「マザー・ウォーター」
「マザー・ウォーター」
そろそろ桜の花もひらこうとする季節、古びた家もまじる京都の商店街で何とはなしにつながりを持つ人々。ストーリーをたどっても、取り立てて何かが起こるわけではない。ただ、静かに穏やかな空気の中でやわらいだ落ち着き、その純粋型を取り出して映像に仕立て上げたという感じだ。この人たちはどうやって生計を立てているのだろう?なんて突っ込みは野暮。しょせん虚構に過ぎないとは思いつつも、映像から流れ出てくるゆったりとした空気に身を任せていればそれでいい。
職場を出る間際に朝日夕刊をパラパラめくっていたら、ナイーブなゆるさにイラつくという趣旨の辛口な映画評を見かけたので、映画館に入るまで少々不安だった。実際に観てみると、思っていたほど悪くはない。少なくとも私は嫌いではない。ただ、観る人の性格やその時の気分によって反応は大きく分かれそうだ。まったりとした空気そのものに馴染めない人には退屈だろう。気分が滅入っていて心を落ち着けたい場合なら良いと思うが、攻撃的に内向した苛立ちを抱えている場合にはかえって癇に障って逆効果かもしれない。
ロハス志向の人には受けるのか、観客の大半は若い女性で占められていた。キャスティングの顔触れといい、さり気なく出てくる食べ物や飲み物をいかにもうまそうに見せる演出といい、荻上直子映画のコピーに過ぎないのではないかという印象も受けた。
【データ】
監督:松本佳奈
出演:小林聡美、小泉今日子、加瀬亮、市川実日子、永山絢斗、光石研、もたいまさこ
2010年/105分
(2010年10月5日、シネスイッチ銀座にて)
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